映画「パラサイト 半地下の家族」(2020年)や「ベイビー・ブローカー」(2022年)で世界を魅了した“世界的名優”ソン・ガンホのドラマデビュー作として話題のドラマ「サムシクおじさん」の14話から最終話(16話)が6月19日に公開された。サムシクおじさん(ガンホ)とキム・サン(ピョン・ヨハン)がたどり着いた結末に、多くの視聴者が涙した。(以下、最終話までのネタバレを含みます)

■サムシク、クーデターを持ちかける

「サムシクおじさん」は、1960年代の激動の韓国を舞台にした骨太のヒューマンドラマ。「誰もが1日に三食(サムシク)を当たり前のように食べられる国に」という野望のために暗躍する政治フィクサー“サムシクおじさん”ことパク・ドゥチルと、豊かな国を夢見るエリート青年キム・サンが政治の世界で奮闘する姿を描いてきた。

大統領選挙の不正が発覚し、政治は大混乱。第14話で市民による大規模なデモが発生し、第15話ではキム・サンの悲願であった国家再建部新設がまたも白紙に。政治に失望し挫折感を味わうサンに、サムシクはクーデター計画を持ち掛ける。そして最終話では、サムシクのクーデター計画が何者かによって妨害され、サムシクとサンは危機を迎える。

■「“餅”のようなお方」

目的のためなら手段を選ばない冷酷なカリスマ――。序盤はそんなイメージをまとっていたサムシクだが、回を追うごとに、情に厚くて愛嬌(あいきょう)あふれる人間らしい側面が浮かび上がってきた。

とりわけサンと対峙(たいじ)している時に、チャーミングな“人間サムシク”が顔を出す。第15話では、サンの悲願である国家再建部新設が見送りになって「僕はこの程度の人間なんです」と自分の不甲斐なさを責める彼に、買ってきたばかりの温かい餅を勧めるサムシクの姿が印象的だ。

「この餅、見た目はいたって普通の餅でしょう。蒸すのに時間がかかるし見た目も地味だ。でもこれがまた絶品でね。あなたは…まるで、この餅のようなお方です。どうぞ、熱いうちに」と、笑顔で餅を差し出すサムシク。“食べること”を何よりも大事にし「腹が満ちれば心も開く」と信じるサムシクらしい温かい励ましに、サンは胸がいっぱいに…。「本当に、もちもちしてますね…」と、餅を頬張りながら涙を流した。

■「我らがキム・サンをお助けください…」

自ら手を汚し、非道なこともさんざんしてきたサムシクにとって、常に日なたを歩き、理想に真っすぐ突き進むサンは“希望”そのもの。過去の罪や、しがらみから逃れることのできない自分にはないものを、サンは持っている。だからこそサムシクは、サンにほれ込みすべてを賭けてきたのだろう。

自分はどうなっても、サンの中にある希望の輝きだけは決して失わせてはならない。そんなサムシクの願いはただ一つ、サンに傷をつけないこと。「我らがキム・サンをお助けください…。勉学しか知らない人間です。本当に賢くて、使える人間なんです。キム・サンだけでも、お助けを…」。名優ソン・ガンホがその身を投げ出すようにして口にする率直な願いが胸に迫る。誰よりも純粋なのは、サムシクおじさんなのかもしれない。

■サムシクとサンの涙の対話シーンに感動の声続々

一方、1話から一貫して“国家再建事業”のためだけに前進し続けてきたサンは、最後にやっとサムシクの思いを目の当たりにする。涙ながらに語るサムシクの頬を拭いながら、サンの目にも涙があふれる。夢や理想で武装するのをやめて、初めて一人の人間としてサムシクと対峙したサンの、毒気の抜けたようなあどけない表情が印象的だ。

政界を揺さぶっていたことがうそのように子どものように泣きじゃくる2人の姿に、最終話まで見守ってきたファンからは「サムシクとサンの対話に心持ってかれた…私も気がついたら泣いてた」「非情になりきれないサムシクおじさんが愛おしい」「サムシクのサンへの想いよ…切ない片想いみたい」といった感動の声が上がっている。

「サムシクおじさん」は、ディズニープラスのスターで全話独占配信中。

◆文=ザテレビジョンドラマ部