全国有数の桜の名所・弘前公園は20日、満開宣言後初の週末を迎え、多くの観光客でにぎわった。来園者数を押し上げているのがインバウンド(訪日客)とみられ、青森県弘前市の観光関係者らは「落ち込んでいた国内からの観光客が戻った上、訪日客が上乗せされている。コロナ禍前を超えているのでは」と口をそろえる。

 20日午前、同園の追手門付近で今年から訪日客向け園内ガイドを手がける「WORDFIX(ワードフィックス)」(弘前市)のブースには訪日客が次々に訪れ、スタッフが対応に追われた。米マサチューセッツ州から弘前大学に留学中のチャーリー・クラップさん(21)は「アメリカやオーストラリア、タイなど各国からたくさんの人が来ている。ガイドは大変だけど、弘前の歴史や文化を説明するとみんな関心を持って聞いてくれる」と充実した様子だ。

 同団体の成田慎一郎ゼネラルマネジャーは「弘前公園が『一度は行ってみたい桜の名所』1位に選ばれた辺り(4月上旬)から訪日客が一気に増えた。予約やガイド内容についての問い合わせも多く、とてもうれしい」と笑顔を見せた。

 訪日客の入国制限は、新型コロナ5類移行に先立つ昨年4月29日に終了。史上最速の早咲きだった昨年の弘前さくらまつりでは恩恵を受けられなかった。

 弘前公園に隣接する観光施設・津軽藩ねぷた村の中村元彦理事長は「コロナ前に比べ、今年の訪日客は4割ほど増えている感覚。国内客も多い」と語る。来客者の国籍数がコロナ前より大幅に増えているのが特徴で、台湾や香港などに加え、欧米各国や東南アジアなど10以上の国から訪れているという。

 市観光課などと園内の訪日客の動向を調査している旅行大手JTB(本社東京)の担当者も「弘前公園は訪日客が例年に比べ非常に多い印象だ」と話す。

 園内の露店でも大勢の訪日客が商品を買い求め、英語など多言語のメニューで出迎える店も多く見られた。杉の大橋付近でコーヒー店を出店する成田専蔵さん(72)は訪日客増を喜び「特にアジア系の人たちは『コーヒーください』『いくらですか?』と片言の日本語で話してくれるので、肩が凝らなくていい」と笑った。