ギャンブル依存症を患い、専門治療機関に通う人が青森県内で増えている。弘前市の藤代健生病院の依存症リハビリテーション(回復)プログラムを受ける人は、アルコールよりもギャンブルの患者が多くなった。オンラインで安易にギャンブルに手を出しやすくなったことが患者増加の一因として挙げられている。医療関係者は「ギャンブル依存症は病気。治療すれば回復することを知ってほしい」と語る。

 「パソコンに向かい、賭けた結果が出るまでの時間が居心地良かった」

 「(負けた時に)自己嫌悪やストレスに襲われた」

 4月25日、藤代健生病院で行われた依存症回復プログラム。参加者がこれまでの経験を話し、進行役の作業療法士・相馬史弥さんが耳を傾けていた。

 参加した6人のうち、4人がギャンブル依存の人。20代とみられる若者の姿もあった。

 多額の借金を抱え追い詰められ、自ら同院に駆け込んだ人、家族に連れられて受診した人などさまざま。県南から訪れる人もいる。

 担当の坂本隆医師(名誉院長)によると近年、ギャンブル依存の受診者が増加。同院回復プログラムを受ける人の6、7割を占め、アルコール依存の人を上回っているという。「オンラインで賭け事に手を出しやすくなっていることも背景にあるのではないか」と語る。

 同病院では、外来患者と入院患者を対象にした回復プログラムをそれぞれ週2日実施。医師や看護師、作業療法士などで構成する15人の多職種チームが依存脱却へ向けた情報と正しい知識を伝えている。

 プログラム担当の千石利広医師は「ギャンブルも、アルコールも、薬物も依存の問題の根っこは同じ。孤独感や寂しさなど心の問題がある。人の温かさを感じてもらえるようにしている」と話す。坂本医師は「正しい知識を身に付けて、治療すれば回復することを知ってほしい」と述べた。

 県内でギャンブル依存対策は進んでいないといわれる。青森市の精神科医療機関の担当者は「ギャンブル依存への対応について院内でも議論しているが、専門の治療プログラムは実施できていない」と説明した。

 八戸市の精神科・青南病院では、藤代健生病院のようなプログラムは確立されていないという。深澤隆院長は「パチンコ、ゲーム、ネット投資など、依存症を患う人の相談は増えている。精神疾患が合併している場合には、その精神疾患の治療を優先するなど個別に対応している」とし、「国内の依存症対策は全般的にまだまだこれからという印象を受ける」と語った。