元本郷町にある八王子市役所本庁舎で、2022年度から2カ年にわたり進められていた浸水対策建築工事が完了した。近くを流れる南浅川の氾濫を想定し、建物外周部と内周部にコンクリート擁壁や防水扉、止水板などで二重の水防ラインを設けて庁舎内への浸水を防止する。災害時の対策本部機能をもつ本庁舎の水害対策体制の強化を図った。

北に浅川、西に南浅川が流れる位置に建つ本庁舎。2019年の台風19号(令和元年東日本台風)を含めこれまで浸水したことはないが、想定し得る最大規模の降雨(時間最大雨量153mm、総雨量630mm)があった場合に川が氾濫し、最大で約2メートル浸水する可能性があることが、20年に公表された都の浸水予想区域図で指摘されていた。

二重の浸水対策

工事は主に防災センターや非常電源などの重要設備室がある地下階への水の侵入を防ぐことを目的にしたもので、庁舎の外周部を囲むように設けた「第1水防ライン」と、内周部を守る「第2水防ライン」からなる。コンクリート擁壁や防水扉、シート式・脱着式・スイング式の3種類の止水板が設置され、高さ2・1メートルの防壁で庁舎への浸水を防ぐ。また敷地内にあるガソリンスタンドなどの設備にも、同様の工事が施された。

工期は22年12月22日から24年3月15日まで。2カ年にわたる浸水対策工事で総額4億5194万円を費やした。

工事の完了を受けて、4月18日にシート式とスイング式止水板の設置デモンストレーションが、本庁舎の中で最も低い位置にある食堂前で行われた。シート式は高さ1メートルある防水壁の上に1・1メートルのシートを設置する造りで、浸水の恐れがある場合に市職員が手作業で組み立てる。市の水位・雨量・ライブカメラ等監視情報システム「RisKma」により、川が氾濫危険水位に達する2時間前に動くことができるという。