追浜駅に隣接する湘南病院(運営=社会福祉法人湘南福祉協会)は、院内に小児科を開設し、5月14日(火)から診療を開始する。背景にあるのは同地区の小児科医院の閉院や近年における年少人口の増加。同地区の子育て環境の充実に寄与し、地域に根ざした総合病院を目指す。

湘南病院は1946年、元海軍航空技術廠技術将校の高等官宿舎跡に設立された。内科・外科・整形外科・耳鼻咽喉科などを擁する総合病院で、大規模な精神科病棟を持つことで知られる。かつて小児科も設置されていたが、2016年3月に休止している。

地域から要望の声

同院大滝紀宏院長によると、現在小児科は医院・医師ともに全国的に減少傾向にあるという。少子化のほか、新型コロナ禍で広がった「受診控え」による患者減が病院経営を圧迫し、担い手の高齢化も手伝って閉院するクリニックが相次いでいる。

追浜地区も同様で、一昨年地区内に2つあった小児科医院のうち一つが閉院。現在開業している「ふくなが小児科」(追浜本町)が休診の際、患者と保護者は汐入駅か金沢八景駅付近の医院まで足を運ばなければならないのが現状だ。「急な熱が出たとき近くに病院がないのは不安」といった保護者の声は同院職員らにも届いており、院長の「総合病院として地域のニーズに応えたい」という想いから開設に至った。

診療日はふくなが小児科休診時の火・木曜日の午後3時から6時。学校の早退や急な発熱等を起こした患者が利用しやすいよう、予約制は採用していない。

担当医として着任する志賀綾子医師は「総合病院の中に小児科クリニックがあるというイメージで、近隣の方には気軽に利用してほしい」と話している。

再開発計画も後押し

横須賀市では0歳から14歳までの「年少人口」が2010年に比べ約3割減少しており、ほとんどの地区で少子化が進んでいる一方、追浜地区では同じ期間で唯一増加。全年齢における比率も衣笠地区に次いで2番目に高くなっている。追浜駅前では再開発事業計画が進んでおり、28年には住居を含んだ複合高層施設が2棟竣工予定。小児科の利用者増が見込まれることも開設を後押しした。

「思春期外来」と連携

同院には精神科内に思春期ならではの疾患に対応する「思春期外来」を設置しており、小児科との連携を図っていく。志賀医師によると、患者の体調不良、痛み等の症状が心の疾患に起因するケースも珍しくないという。「体と心の両面からサポートできる体制は当院ならでは」。人間関係の悩みや不登校、自傷行為など、現代的な問題へ小児科医療からアプローチする。これに対応するため、同院の小児科は高校卒業までの患者を扱うこととしている。