配置もギアも自由自在。おいでよ、”妄想”の世界へ――。辻堂東海岸のウェブエンジニアが開発した、キャンプ愛好家向けアプリが密かな人気を集めている。テントやタープ、車などキャンプサイトの配置シミュレーションが可能で、ニッチな分野ながら開発からわずか3年で3万ダウンロード(DL)を超えた。キャンパーを虜にする不思議な魅力。その名も、「妄想キャンプ」だ。

開発したのはウェブエンジニアの星野祐也さん(42)。自身も愛好家で5年ほど前から月に1〜2度、県内外のキャンプ場に足を運んでいる。

開発に着手したのは2021年1月。新型コロナ禍で仕事が減り、時間にゆとりができた。技術者として以前からアプリを作ってみたいという思いがあり、キャンプの初心者にありがちなある”落とし穴”を題材に据えることにした。

その落とし穴とは、テントなどを設営するための「サイト」だ。どこでも自由に設営できる「フリーサイト」とは異なり、特定の場所内に設営を求められる「区画サイト」はテントやタープ、車を決められた区画内に収めなければならない。また過ごしやすく効率的な配置を考え、可能な限り早く設営することが求められるが、「これが案外難しい」と星野さん。「例えば8m×8mの中に必要なギア(道具)を収めるには、それぞれのサイズを把握する必要があるが、現場で考えるとあわてたり失敗しがち」

そこで、アプリでは利用者が異なる広さの区画にさまざまなアイテムをスタンプのように配置することで事前にシミュレーションできるように。テントはブランドごとに形やサイズ、素材などの比較が可能で、ギア選びの参考にもなるように工夫した。

ギアを追加できるリクエスト機能も備え、新作が発売されるたび、仕事の合間を縫って応え続けた。同年3月のリリース以降、ギアは増え続け現在千種類近くにもなる。SNSを中心に話題が広まり、翌年3月には1万DLを突破した。

キャンプとアプリの開発を通じ、自身の交友も広がった。アプリの運営は趣味で収益性はほとんどないが、星野さんは「キャンプが好きで、皆が喜んでくれるのがやりがい」と意に介さない。

今後の目標は「伏字のブランド名を実名にすること。それに新しい機能も追加していけたら」。「妄想」の先の野望は広がるばかりだ。