小田原市南町の十字町商店会がこのほど、明治から昭和にかけて小田原で暮らした著名人を紹介した冊子「十字町ヒストリア」を刊行した。260頁に及ぶ力作には、山縣有朋や伊藤博文、北原白秋、谷崎潤一郎など約150人の足跡が収められている。

今はない「十字町」は明治期の小田原にあった町の一つで、現在の南町と本町、城山の一部。

三井物産の初代社長を務めた益田孝が明治後期、市内に居を構えて始めた茶席。そして大正期に建った結核の療養施設。2つの要素が重なったことで経済人や政治家、文化人まで含めた多彩な顔触れが十字町周辺に住んだとされる。

今回の冊子は2冊に分かれ、1冊目「多くの著名人に愛された十字町」(180頁)には人物の記録や歴史をイラスト、地図などで紹介。2冊目「十字町界隈の記録」(80頁)ではこれまで同商店会が実施した企画展やまち歩きの資料などが記されている。

小田原の近現代史を残す

冊子を製作したのは2015年に発足し、同エリアの歴史を調査、発表してきた団体「十字町ヒストリア」。メンバーの金子不二夫さん(77)が中心となって、これまでの資料を1年半かけて取りまとめた。

ヒストリア発足は歴史愛好家の十字町商店会OBが、周辺で暮らした著名人をまとめた文献を当時、商店会長だった金子さんらに託したことがきっかけ。「ここがお屋敷町だったことは知っていましたが、それ以外はよく知らなかった。そうそうたる小田原の近現代史を残し、伝えていくべきと思った」と金子さんは振り返る。

活動の集大成となった冊子は500セット(1500円)作られたが、現在は残り200部ほどと売れ行きも好調という金子さん。「著名人同士の関係で生まれたまちの歴史に触れて欲しい」と話している。冊子の問い合わせは【電話】0465・23・1451(ユニオン商会・金子さん)。