東芝の本社が、JR川崎駅近くの川崎本社「スマートコミュニティセンター」(幸区堀川町)に集約されることになった。5月16日に東芝が公表した2024年度からの中期経営計画に、収益改善の柱として盛り込まれた。人員削減を伴う組織改編の一環だが、川崎は前身の「東京電気株式会社」ゆかりの地。市長も「連携を進化させる」と期待感をコメントに込めた。

東芝本社は東京都港区のJR浜松町駅前とJR川崎駅西口の2カ所にあるが、中期経営計画によれば、東京の本社機能を25年度上期までに川崎の「センター」内に一本化する。現状で「センター」では約9千人、浜松町では約900人が勤務しており、集約する来年後半には約1万人態勢となる。

東芝と川崎の縁は深く、1908年に前身の東京電気株式会社が、現在の「センター」と「ラゾーナ川崎」のある一帯に川崎工場を開設した。39年に芝浦製作所と合併して「東京芝浦電気(現・東芝)」となって以後は「東芝堀川町工場」と呼ばれ、この地で電球や真空管、半導体などの画期的な新製品や新技術が生み出された。

06年の再開発で一帯が商業地域となったが、随所に工場の遺構が残された。「東芝ブラウン管発祥の地」と刻まれた記念碑や、明治期から工場の歴史を見守り続けた桜の木、工場の守り神として島根県の出雲神社から分祀された神社などが、ラゾーナ川崎や「センター」2階の「東芝未来科学館」の敷地内に点在する。「未来館」広報担当の木下成雄さんは「見つけにくいものもあるが、ぜひ探してみて欲しい」と話す。

市としても、水素エネルギーの実証実験やスマートコミュニティーの実現に向けた協定を締結し、官民で取り組みを続けてきた。

16日の発表を受け、福田紀彦市長は「連携をさらに進化させ、地球規模の課題解決に向けた様々なイノベーションが、ここ川崎から次々と生み出されることを期待します」とコメントを発表した。