藤澤浮世絵館で5月25日(土)から企画展「歌川国貞(三代豊国)の役者見立東海道歌舞伎役者の面影」が開催される。7月3日(水)まで。

展示されるのは、江戸時代後期の絵師・歌川国貞が1852年から翌年にかけて発表した「役者見立東海道」の89点。同作は手前に当時人気の歌舞伎役者を役柄の姿で描き、背景を東海道の風景画にするという構図となっている。

担当した同館学芸員のウェイ笑さん(27)は、「風景と役柄が関係したものが多い」と解説する。その中で「東海道五十三次の内箱根初花」では、「箱根霊験躄(いざり)仇討」という演目で、六代目岩井半四郎が演じる「初花」が幽霊となり箱根の滝に打たれるという場面が描かれている。

風景と役者の関連は、演目の内容だけではない。「東海道戸塚藤沢間大坂逢坂」という作品は、藤沢と戸塚の間にある地名「大坂」に、二代目尾上菊次郎が演じる遊女「逢坂」をかけたものだという。また、「東海道五十三次の内沼津荷物平作」と「東海道五十三次の内原呉服屋重兵衛」に描かれる人物は、同じ「伊賀越道中双六」という演目の沼津の場面に登場するが、隣の宿場である原には関係がない。「当時ではお馴染みのペアを並べることもあった」とウェイさんは紹介する。

人気の理由は

同シリーズは、初めは東海道の53宿が出版され、人気の高さから「間(あい)の宿」などが後に追加された。描かれる役者の知名度に、歌川広重の「東海道五十三次」などの流行を重ねた作品であることが、江戸の人びとの支持を受けた要因の1つだと推測できるという。ウェイさんは「毛を1本ずつ際立たせる彫りの技術や、模様を浮きだたせる摺りの技など、細かな部分も楽しんでもらえれば」と来場を呼び掛けた。

午前10時から午後7時。月曜・祝日は休館。学芸員による見どころの解説は6月1日(土)と30日(日)に開催。両日午前11時から11時半と、午後3時から3時半。参加無料。定員は当日先着30人。問い合わせは同館【電話】0466・33・0111。