リーダーとして、また上司として、部下から出される「予期せぬ兆候」があるというサインを感じたことがあるだろうか。

そんなとき、部下から適切な情報を引き出し、正しい判断をするには、どのような声かけが必要になるだろうか。デビッド・マルケ氏の著書『最後は言い方』より、そのヒントを紹介しよう。

チームでの活動中に、予期せぬことが目に入った人には、中断を呼びかける責任が生じる。だが、実際にその声をあげるのは難しい。

中断の声をあげるのはなぜ難しいのか

中断の声をあげにくい理由はいくつかあるが、そのうちの一つに、作業に没頭してしまうと、他のことが目に入らなくなるということがある。

生産モードにどっぷり入り込み、時間を忘れて何かに夢中になったという経験は、誰にでもあるだろう。

そうした精神状態のことを、心理学者のミハイ・チクセントミハイは「フロー」と名づけた。仕事に完全に没頭している感覚を指すと思えばいい。そうなったらどんなに素晴らしいことか!

ただしそれは、その仕事がそのときにやるべき仕事であればの話である。没頭する対象が間違っていれば、そうと気づかせる合図が必要だ。

人は作業にのめり込むと、フォーカスの対象が絞り込まれて視野が狭くなる。この集中力がタスクの達成を助けてくれるのは事実だが、自己管理の機能が制限される。

時間の感覚を失うのもその一例で、食事を忘れることだってある。手をとめて別の選択肢を検討したほうが賢明なときであっても、頑なに続けようとする。