この感覚が、相談のしやすさや声のかけやすさにつながり、コミュニケーションロスが起こりにくくなるのです。「ちゃんと聞いているよ」ということを態度で示すことは相手の心理に大きな影響を及ぼします。

さらにじっくり話を聞きたい場合に有効なのが、「繰り返す」です。相手が、「クライアントのレスポンスが遅いんです」と言えば、「そうか、レスポンスが遅いんだ」と繰り返します。この手法は、「オウム返し」などの形でよく知られているので、実践されている方も多いでしょう。

しっかりと耳を傾けてから、「つまり代理店との連携に問題があるんだね」「先方の管理システムが構築されていない可能性があるね」などと、相手の言葉そのままではないキーワードを示すのが「要約する」段階です。要約が的確になされていると、相手は、「自分の言いたいことがきちんと伝わっている」という安心感を、よりいっそう強く覚えます。

意外とできていない人が多い「人の話を聞く」こと

一方で、中途半端なタイミングで要約してしまったり、相手が特に伝えたいこととずれていたりすると、「早く話を終わらせたいのかな?」「ちゃんと聞いてくれているのかな?」と不安を与えてしまいます。

そして最後に「君はどうしたい?」「相手にどうしてほしい?」と質問を投げかけてみてください。悩みを打ち明けているときに、自分の中で問題が整理できて解決に導かれることもあります。

そこで相手に自分の話を整理されると、より解決の糸口が見つかりやすくなるでしょう。「人の話を聞く」というのは、当たり前だし、言われなくてもやっていると思うかもしれません。

しかし、自身を客観的に振り返ってみると、案外みなさん、きちんと聞けてはいないものです。

聞き流していたり、仏頂面で聞いていたり……こうした相手とは、話す気になれませんよね。丁寧に聞くだけで、相手は心を開きやすくなり、相手について知るチャンスにもつながっていくのです。

著者:池田 昌人