飲食は儲けるのが容易ではなく、流行り廃りも激しい業界です。生食パン、白いたい焼き、タピオカ、からあげ、カヌレ、フルーツサンド……。流行りに乗って脱サラしたらブームが去ってしまった、という話を一度は聞いたことがあると思います。

成功か破産か。さながら「清水の舞台から飛び降りる覚悟でやる」イメージでしょうか。

日本人は根性論が大好きなので、こういう表現は刺さる人には刺さります。しかし実際のところ、そんな意気込みで臨む経営者ばかりではありません。

たしかに日々の努力は欠かせませんが、無理にリスクを犯す必要は微塵もないのです。

ひと昔前、「起業するからには与信枠(利用限度額)を使って借金しろ!」というメッセージが広く出回ったことがありました。私はそれを真に受けて破産していった若者を何人も知っています。

起業にかぎらず、どの業界にもオピニオンリーダーがいるので、強いメッセージは浸透しがちです。でも、プレッシャーをプラスにかえて伸ばせる人ばかりではなく、プレッシャーに勝てず、凝り固まってしまう人もいます。

世の中には大成功でもない、大失敗でもない、地味なストーリーがたくさんあります。

見よう見まねで始めて、気がついたら創業30年。そういう会社は山のようにあるのです。しかも、細部の違いこそあっても、それらは大筋が同じストーリーを持っています。

決して意識的ではないにせよ、同じ思考プロセスをたどっています。その勘所をうまくつかむことさえできれば、地道に稼ぎ続けることは可能なのです。

うまくいったやり方を別の場所で

商工会議所にかぎらず、勉強せずに起業した経営者は(背景や事業内容などこまかいところは違っても)同じことをしています。それは、「成功している誰かのやり方を、空いているほかの市場でやる」です。

同業者や取引先から「あそこにいっぱい仕事あるよ」と聞けばそこに支店を出すし、「どこに広告打ったの? 効果があったならウチもそこで出そう」と出稿しています。

なぜそんなことをしているのかというと、彼らは「お金を稼げるポイント」がわかっているからです。