「教育の方針としては、幼稚園から社会人になるまでを見越した、情報活用能力を、みんなで育んでいくこと、としました。

これからの社会をたくましく生き抜く力を、小学校・中学校という時間の縦軸と、子どもたちの教育空間・生活空間という横軸の、双方で広げていけることを設計に盛りこみました」(池田氏)

そのため、学校内だけでなく、図書館、公民館といった新潟市の関係施設にWi-Fiを導入。学童保育も例外ではなくなった。学びの時間だけでなく、遊びの時間にも、iPadを深く活用してもらえるようにしたという。

池田氏の取り組みは、単なるタブレットの一部授業への導入という部分的なデジタル化ではなかった。

学校での授業全体、教職員の業務全体、そして家庭を含めた子どもたちの生活全体に対して、どのようにデジタルを浸透させるか、という「全体最適によるDX化」を考えたからこそ、成功した。

持ち帰り前提のiPad、脅威の故障率2.34%

新潟市がGIGAスクールで選んだ端末はアップルのiPad。アクセシビリティ(直感的操作)、起動の速さ、iCloud同期、そして壊れにくい、という特徴から選定したという。

これまでのところ、iPadの故障率は全体の2.34%と、驚異的な低さを保っている。池田氏によると、故障の内訳は落下による画面破損が7〜8割だったという。

しかもこれは、端末の持ち帰り学習を許可したうえでの数字だと言うからさらに驚かされる。

持ち帰り学習は、教育委員会主導で決定したというが、その理由は前述の通り、学校という教育空間だけでなく、放課後や家庭という生徒たちの生活空間での活用も進めていきたいという方針に基づくものだ。

「一方的に制限を与えるのではなく、YouTubeも見られる設定の中で、失敗もしながら学んでいく姿勢を考えています。家庭においても、学校や教員からではなく、子どもと保護者が主体的にルールを決めて守れるようにすることを目指しています」(池田氏)