筆者は昨年9月頃から、業界団体やタクシー会社、政界と多方面からライドシェアへの取材を重ねてきた。そのうえで感じるのは、きわめて異例とも言えるペースで日本型ライドシェアの枠組みが決まっていったということだ。

指針も日々変わっていき、ほとんどの事業者が解禁の1週間前でも慌てふためいており、現場は混乱していた。ただし、これはタクシー事業者に瑕疵があるというより、政府を含め制度設計を突貫工事で進めてきたゆえに起きている現象でもある。

裏を返せば関係者たちの危機感が募り、移動の足を確保するという課題の早期解決へと向けた努力によるものだが、そのスピード感ゆえに粗さも目立ち、まだ手探りの段階だ。

あくまでタクシーの供給不足を補うことが目的

では、今稼働する日本型ライドシェアのポイントは何なのか。これはひとえに「タクシーの供給不足を補うことを目的としている」ということだ。「ライドシェアを指定して乗れない」という一部からの声も上がっていたが、これは前提として認識が間違っていることは記しておきたい。

不安視されていた安全・安心の担保をタクシー事業者が行うことを目的に、タクシー会社主導で管理・運行や研修、採用活動などを実施している。例外なくタクシー事業者と同等の料金体系での利用となっており、この点が、主にダイナミックプライシングが適応されている海外のライドシェアとの違いでもある。日本のライドシェアは、「タクシー会社で働く自家用車のパートタイマー」という表現が、最も現状に近いという気もする。

稼働時間は、国交省が定義する供給不足が発生しているという時間帯に限られている。その時間と不足台数は東京特別区・武三地区で、月〜金曜日の7時〜10時台が1780台。金・土曜日の16時〜19時台が1100台。土曜日の0時〜4時台が2540台。日曜日の10時〜13時台が270台だ(数字や時間は4月8日の開始時点)。

しかし、ドライバーは週20時間という限定された稼働時間の中で毎日働くわけでもないため、国交省が定める数字を確保するには、各時間でこの倍近い人員が必要となるはずだ。

4月15日の時点で登録ドライバーが東京では389人だったことを考慮すれば、とても数カ月間で到達可能な数字とは思えず、いずれにしてもまだまだドライバーは圧倒的に足りていない計算となる。東京でもこういった状況であることから、他の地方都市では、採用に関してはより厳しい状況であることは想像に難しくない。