まず、前提として「どのように売上を上げるのか」「どのようにコストを削減するのか」といった、具体的な方法を深く理解していることが重要です。

そのうえで、「一般的なお客様」に語りかけるのではなく、悩みを抱えた目の前にいる「1人の人物」に伝えるのだということを意識しましょう。その人物がどんな状況に置かれて、誰とどんなやりとりをしているか、というところまでイメージし、文章で表現するのです。

そのために、社内にあるお客様の事例を徹底的に研究しましょう。事例研究とは、単に事例の存在を知るだけで終わらず、「うまくいった案件に共通していることは何か」「うまくいった案件といかなかった案件の違いはどこにあるか」を言語化することまでを指します。具体的な課題解決の過程や方法を詳しく説明できることが重要です。

入口段階で「費用対効果」をどう示すか

「実際に発注してもらえれば、費用対効果を実感されるはずなのに……」と、アポイントや提案機会をもらえず悔しがる営業の方からお悩み相談を受けることがよくあります。

提案前の、まだ買ってもいないお客様に対して費用対効果を伝えることは難易度が高いものです。そこで、限られた接点でお客様に費用対効果をどう訴求するか、解説します。

費用対効果については、できるだけ具体的に説明することが望ましいです。もちろん、「XXXのような課題を抱えていらっしゃったA社様で●●●に取り組まれることにより、■%の売上アップにつながりました」のように、数字や導入企業の実績を用いて説明できれば、それは強力な根拠となります。

ただし、注意すべき点があります。それは、「忙しさの仮面」をつけたお客様から「都合のいい事例だけを示しているのでは」と疑われてしまうことです。

これを防ぐためには、費用対効果が高く出た事例を示すだけでなく、その背後にある根拠(ロジック)も説明することが効果的です。

高い費用対効果が実現できる根拠として、独自の工夫によって低いコストで実現できることを示すのが最もわかりやすいでしょう。

たとえば、下記のようなものです。

・従来は人手をかけて●●●の作業をしていたが、AIの活用で自動化できたので、月額XX円で提供できるようになった

・■■■の業界で経験を積んだ創業者が、今までの業界にあったムダを省くことで、3分の1のコストで提供できるようになった

・当社がこれまで構築してきた▲▲▲業界とのつながりによって、仕入先を多数抱えている

こういったポイントを説明することで、なぜ優れた解決策を当社が提供できるのかを示すことができます。

お客様が疑ってかかる「都合のいい事例だけを持ってくるのではないか」という懸念に対処するロジックをあらかじめ用意しておくことが重要です。

著者:高橋 浩一