――国内の地方鉄道へはどのような支援をしているのですか。

たとえば、ホームドクターという制度があり、現地を訪問して鉄道構造物の補修、管理などさまざまな相談に応じています。長年やってきており相談事例はたくさんあります。技術的な支援だけでなく、交通計画支援システム(GRAPE)を使って鉄道を取り巻く状況や鉄道プロジェクトの整備効果を詳細に分析してビジュアルに表示するといったお手伝いもしています。また、地域鉄道への助成を行う国の仕組みがあります。制度ごとに負担割合が決まっており、それに基づいて私たちが交付業務を行います。

――能登半島地震でのと鉄道が被災し、JRTTが鉄道災害調査隊を派遣しました。

国交省がレールフォース(Rail-Force)と呼んでいるので、私たちもそれにならってレールフォースと呼んでいます。中小の民鉄さんや地方の鉄道会社さんの経営状況が非常に厳しい中で、災害が非常に増えているため、昨年この仕組みを作ったところ、早速5件のお声がかりがありました。普段は鉄道の設計や建設にかかわっているスタッフたちが要請に応じ現地に赴き、被災現場の全体像を把握、個別施設の被害状況を調査し技術的助言を行うなど、早期の復旧を支援します。

JRTT 藤田理事長 青函隧道 中曽根康弘 インタビューに応じる鉄道・運輸機構の藤田理事長。壁には故・中曽根康弘元首相が揮毫した「青函隧道」の書が(撮影:尾形文繁)

インド高速鉄道にも専門家を派遣

――インドの高速鉄道ではどのような業務をしているのですか。

プロジェクトの調査段階では事業可能性調査や構造物の詳細設計について鉄道の専門家を派遣しています。プロジェクト進行中の現在は、事業主体であるインド高速鉄道公社(NHSCRL)へ鉄道に関する総合的なアドバイザー・専門家として、技術者を派遣しております。また、インドからの研修員を受け入れ、新幹線建設現場を案内し、建設における安全性についても理解を深めてもらっています。さらに、NHSRCLが電気システムを調達する際、日本高速鉄道電気エンジニアリング(JE)が発注支援をしますが、私たちはJEに出資しています。

――海外の鉄道コンサルティングでは日本コンサルタンツ(JIC)や海外鉄道技術支援協会(JARTS)もありますが、どのように棲み分けているのですか。

JICさんは株式会社であり、インドの高速鉄道プロジェクトはビジネスとして行っています。JARTSさんは社団法人で公益的事業を行う非営利団体。法人のステータスが違いますのでそれぞれ役割分担があると思います。JRTTにおいては、海外インフラ展開法が2018年に施行され、JRTTの業務に海外高速鉄道調査の業務が追加されたということで歴史が浅い。基本的には私たちのノウハウが活かせるところに人材を出しています。