5期目をスタートさせたばかりのプーチン政権最上層部で政権史上、最大の「激震」が起きた。12年間国防相の地位にあったプーチン氏の側近の1人、セルゲイ・ショイグ氏が事実上更迭されるなど、大規模な入れ替えがあったのだ。

プーチン氏が仕掛けた上からの政変劇はまだ進行中で、今後のロシア情勢はまだ見通せない。水面下も含め、いったい何が起きているのか。今後プーチン政権はどこへ行くのか。その核心に迫ってみたい。

汚職で逮捕されたショイグ国防相の側近

2024年5月7日のプーチン氏の正式就任後、ロシア・ウォッチャーにとって最大の注目点はショイグ氏の処遇だった。その半月前に、ショイグ氏の片腕であり、「財布」とも呼ばれたチムール・イワノフ国防次官が突然「多額の賄賂を受け取った」容疑で逮捕されたからだ。

まさに青天の霹靂だった。ショイグ氏の解任や逮捕があるのではないか、という臆測が急浮上した。結局プーチン氏はショイグ氏を国防相から安全保障会議書記のポストに異動させるだけにとどめ、形式的には解任色を隠した。しかし、今回の一連の経緯をみれば、更迭であることは間違いない。

これまでも失政を理由に閣僚クラスを更迭するに際し、政権外に放り出さず、形式的に別の高官ポストを与えるのがプーチン流人事だった。政敵を作ることを回避するため、政権内に取り込み続ける巧妙なやり方だ。

ただ、ロシア政界にとって衝撃だったのは、「汚職」そのものではない。この種の高官の汚職が捜査当局によって表舞台で「摘発」されたことだ。

プーチン政権では閣僚らは「職務を果たしていれさえすれば金銭的な汚職や不正蓄財は罪に問わない」というのが暗黙のルールだったからだ。この逮捕は「ついに長い間のタブーが破られた」とも評された。