ハッキリと病んでいるわけではないけど、毎日の仕事と家庭のアクシデントに追われて、意外とギリギリな精神状態。ふだん大丈夫そうに見える周囲の人たちも、心の中を見てみたら、おそらくたいていはそのようなものだと思います。

波立つ心をしずめ、毎日心穏やかに過ごし、仕事でも家庭でもハイパフォーマンスを続けるための行動や考え方のヒントを、ハーバード大学准教授で精神科医の内田舞さんの新刊『まいにちメンタル危機の処方箋』より一部抜粋、再構成してお届けします。

自分の心を波立たせるのは「自分の感情」

私は現在、マサチューセッツ総合病院の小児うつ病センター長として、子どもたちのうつ病や躁うつ病、不安障害、ADHDなどの精神疾患を診療しています。臨床医として患者さんを診察する傍ら、ハーバード大学医学部准教授・脳神経科学者として、子どもの気分の調整が脳の中でどのように行われているかの研究も行っています。

また、働きながら3児の子育てをする当事者として、日々のストレスと対峙しながら一生懸命毎日を生きているみなさんに、日常づかいのセルフケアの方法・考え方をシェアしたいと願っています。

セルフケアに取り組むときに意識してほしいのは、自分の「感情」です。

毎日なるべく平穏な気持ちで過ごしたいと思いつつ、私たちの心を波立てるものは一体なんでしょうか。よく考えてみると、それは自分自身の感情だったりしないでしょうか。「怖い」「不安」「悲しい」「緊張する」など、そうしたネガティブな感情が湧いてこなければ、もっとラクに生きられるはずなのに……。