ヨーロッパでは、溶連菌、髄膜炎菌、肺炎球菌などの流行が確認されている。昨今の麻疹(はしか)の世界的な流行も、このような状況を知れば、見え方が変わってくる。

なぜ、こんなことになるのか。2つの可能性が指摘されている。1つは集団免疫の低下だ。

コロナ流行中、世界各国は強い感染対策をとったため、さまざまな病原体の流行が抑制された。この結果、免疫を有する人の割合が低下し、最近の大流行につながったという訳だ。

コロナ感染の後遺症が原因?

もう1つの可能性は、コロナ感染の後遺症として、免疫力が低下することだ。このことは、いくつかの基礎研究から示唆されていたが、最近になって臨床研究の結果も報告されるようになった。

昨年5月、アメリカのケースウェスタンリザーブ大学の研究チームが、コロナ感染の既往がある小児がRSウイルスに感染するリスクは、既往がない小児の1.4倍であったと報告していることなどは、その一例だ。

この可能性は日本であまり議論されることはないが、2022年10月には、アメリカ・ワシントン大学の研究チームが「コロナパンデミックが市中の呼吸器ウイルスの流行に与える影響」という論文を、イギリス『ネイチャー感染症学レビュー』誌に発表するなど、その議論は進んでいる。

もし、そうならコロナ感染の既往を有する人には、重点的にワクチン接種すべきかもしれない。今後の研究が必要だ。

以上が溶連菌感染の流行の背景である。筆者はコロナパンデミックと絡めて議論すべきと考えている。今後の研究の成果に期待したい。

著者:上 昌広