「特にAI分野で、多くの中国人エンジニアが日本に移住したいと考えています」と郭氏は話す。

海外の対話型AIモデルを使うと、機械学習のためネット上で膨大な量の情報を収集・分析することになる。だが、中国では政治的にセンシティブな言葉を除外する必要があるため、どうしてもアメリカ発の最新モデルをそのまま活用することが難しい。そうした背景のもと、中国人エンジニアにとって海外への転職が自然に視野に入ってきているのだ。

AI開発企業は中国人だらけ

郭氏の知っているだけでもバイトダンスのAIラボで働いていた元同僚3人が東京大学でAI研究に従事している。そして、AI開発の雄、Open AI社にも多くの中国人エンジニアが勤めていると話す。

「OpenAIやApple、Metaが発表した最新のAIに関する論文の筆者や貢献者には多くの中国人やアメリカ在住の華人が含まれています」と郭氏。実際に論文を検索すると、中国人らしき名前は、日本人とは比べ物にならないほど頻出している。中でも、トップランナーであるOpenAIに勤めるエンジニアについては「半分から3分の2ほどが中国人ではないか」と郭氏は推測する。

そもそもなぜAIの世界に中国人エンジニアが多いのか。郭氏は「過去10年で北京の多くの大学が多くのAI人材を輩出し、それらの人々は企業で高密度に訓練され、複雑な問題をどうエンジニアリングするかを学びました。コロナ禍以降、その多くは中国を離れてアメリカで働くことを選んだからだと思います」と語る。

一方で、新天地を目指す中国人にとっては、アメリカでのビザ取得が難しくなっている。そうした背景のもと、ビザの取得しやすい日本が移住先として存在感を高めているというわけだ。

しかし、こうした人材は日本に来ることはあっても日本企業は選ばず、グーグルなどの外資に就職するのが一般的なのだという。日本企業が流暢な日本語を事実上の応募要件としているためだ。