年齢や健康状態、資産残高によっては、当分使う予定がない場合、定期預金にしておいたり、低リスクの金融商品で運用したりすることもできます。また、株式の配当や債券の利子、投資信託の分配金など、収益を定期的に受け取れる金融商品なら、元本を減らさず、年金の上乗せとしてお金を受け取るのも可能です。

老後のお金の危機は「3つの波」でやってくる

あなたの老後は幸せに、穏やかに過ごせそうでしょうか。それは、最後(死ぬ?)までわからないことかもしれません。ただ、お金の側面から見ると、長い老後には、大きな3つの波(危機)があり、これさえ乗り越えれば、あるいは見通しがつけば、安心と言えるでしょう。その3つの波(危機)とは、次の通りです。

① 定年退職から年金受給まで(60歳代前半)

② 配偶者に先立たれた後(80歳代前後)

③ 予想以上に長生きした場合(80歳代後半以降)

あなたが、60歳未満ならまだ対策する時間がありますし、すでに60歳以上でも、3つの危機を知り、これからお話しする方法をできる範囲で実践できれば大丈夫です。

①定年退職から年金受給まで(60歳代前半)

原則、公的年金の支給開始は65歳からです。

ちなみに60歳の就業率は約7割です(総務省の「労働力調査」より)。ところが、給与は、60歳以降、年齢が上がると、どんどん下がっていきます。

収入が減少する一方、支出はそれほど大きく減るわけではありません。特に、要注意は「子どもの教育費」と「住宅ローン返済」の2大支出です。

「結婚が遅くて、60代になっても、末っ子はまだ大学生……」

「退職金で、住宅ローンを完済するはずが、思ったほどもらえなかった」

このようなご家庭の場合、収入だけでは、支出がまかないきれず、貯蓄の取り崩し時期が早まることで、「資産寿命」を短くしてしまう恐れがあります。そうなると、気持ち的な「プチ貧乏」から「リアル貧乏」が現実味を帯びてきます。

ここでの効果的な対策は、「できるだけ長く安定して働く」こと。そして、収入の範囲内で、「家計をスリム化させる」ことです。

中には、定年退職前から、「ねんきん定期便」で年金額を確認し、その金額でやりくりできるよう、少しずつ生活をスリム化する人もいます。とはいえ、日々の楽しみがなくなってしまうスリム化は、「自分の幸せに気づく終活」とかけ離れています。

例えば、喫茶店でコーヒーを毎日飲むのが趣味なら、喫茶店に行くのは週1回、残りの日は自宅でコーヒーをいれるのはどうでしょうか。

趣味や楽しみそのものではなく、その方法をどうスリム化するか。生活水準を下げずに、いかに生活コストを抑えるかを考えてみると、これまで気づかなかった楽しみ方を発見できるかもしれません。