②配偶者に先立たれた後(80歳代前後)

続いて、夫など配偶者に先立たれた後、「おひとりさま」になってからの危機です。問題は、一方が亡くなると、世帯の収入が激減してしまうということ。

総務省の令和4年「家計調査年報」によれば、2人世帯のうち、65歳以上の無職世帯の年金収入(社会保障給付)は月額20万2058円。年齢が上がっても、公的年金の額はそれほど大きく変わりませんので、夫婦で暮らしていれば、ずっと、約20万円の年金が受け取れるわけです。

しかし、夫と死別した65歳以上の女性の平均年金月額は12.1万円。これまで年金が20万円あったとすると、年間約100万円も減少します(厚生労働省の分析調査)。

ここでの効果的な対策は、「夫婦仲よく元気に長生きする」ことです。

単純なことのように感じるかもしれませんが、これがなかなか容易ではなく、しかも気づきにくいことなのです。つまり、日頃から健康に気をつけて生活するだけで、未来へのお金の備えになっているということになります。

長寿を「おめでたいもの」にするために

③予想以上に長生きした場合(80歳代後半以降)

最後は、長生きによって老後資金が枯渇し、生活が困窮してしまう「長生きリスク」。本来なら、長寿はおめでたいのに、リスクになってしまうなんて、悲しいことです。

平均寿命(2022年)は、男性81.05年、女性87.09年。でも、周囲には、もっと高齢な人がたくさんいらっしゃいますよね。

ここでの効果的な対策は、前述の2つの波(危機)をどのように乗り越えてきたか、対策を実行したか次第です。

年を取れば、行動範囲も狭まって、それほどお金も使わなくなるという傾向はありますが、それでも、貯蓄が底をつき、年金だけでは生活できなくなったら、迷わず、行政や福祉サービスを頼ってください。

ちなみに、米国では、「富裕層と貧困層では、寿命に10〜15年も差がある」といった研究結果が発表されるなど、経済的な余裕と寿命には密接な関係があるとわかっています。ぜひ、お金の危機を乗り切って、人生を楽しく長生きしましょう!

著者:黒田 尚子