けっして「どうしようもない人間」の病気ではなく、むしろ「人格者の病」である――。依然として社会からの誤解にさらされることの多い「うつ病」について、精神科医の広岡清伸氏はこう語ります。これまで1万人を診察してきた経験をもとに広岡氏が提唱する、「心の病を根っこから治す」ために必要な「平常心」の育み方とは。

*本稿は広岡氏の著書『心の病になった人とその家族が最初に読む本』から一部を抜粋・編集してお届けします。

うつ病は「どうしようもない人間」の病気ではない

私は、患者さんに、「うつ病は人格者の病です」と伝えることがよくあります。なぜなら、うつ病は、社会に適応して生きてこられた人が、あるとき、不当な要求に応えようとして応えられず発症してしまうことが多いからです。

うつ病の患者さんは、「自分のことしか考えない人間だ」「どうしようもない人間だ」と思われることもあるようですが、私の印象は正反対です。発症したからそう見えるだけで、もともとは人のために献身的に振る舞える人です。

私は、うつ病になりやすい人は社会性があって、順応しようとする人たちだと考えています。ちょっと心配性で、ちょっと気が弱い人なら、なおのこと社会に順応しようとするでしょう。それで成功している人たちです。だからいい高校を出て、大学を出て、一流企業に勤められているのです。