アメリカで中古EVの販売が鈍化しています。価格は安くなっているのに、売れない――自動車調査会社は、ひとつの「限界」に到達しているとの見解を示しています。

全米王者のフォードFシリーズもEVでは苦戦

 アメリカの自動車調査会社「iSeeCars(アイシーカーズ).com」は2023年11月27日、今年10月における全米での中古購入状況のデータを公開し、中古EVの売れ行きが鈍化しているとの見解を示しました。

 アイシーカーズによると、自動車の価格は新型コロナウイルス流行下の高値から落ち着き、新車、中古車ともに低価格となっているそうです。

 その中でも中古車EVの価格は、ハイブリッド車やガソリン車などに比べると、下げ幅が大きくなっているそう。アイシーカーズのエグゼクティブアナリストであるカール・ブラウアー氏は「中古車価格は2022年の中頃から下がり始めた。平均中古車価格は前年比5%減で安定しているが、EVの中古車価格はより大きく、より早く下落しており、現在EVは1年前と比較して平均で33%以上安くなっている」と話します。

 価格が下がる傾向にあっても、EVの販売は鈍化しているようです。アイシーカーズが発表している「最も売れない中古車ランキング」では、以前は高級車だらけだったトップ10の中に、キア・EV6が2位、フォードのF-150 ライトニングが8位、ボルボのポールスター・2が10位と、3台のEVがトップ10入りを果たしています。

 特にフォードのF-150 ライトニングはアメリカで不動の人気を得ているピックアップトラック、なかでも40年連続で販売台数が全米1位を記録しているFシリーズのEV仕様ですが、ブラウアー氏は「アメリカでベストセラーの自動車をベースにしたフォードのEVトラック、ライトニングでも買い手を見つけるのに苦労している」と注目すべき点としてあげています。

 また、中古EVの全体的な販売鈍化に関してブラウアー氏は「価格低下と販売低迷の組み合わせは、EVが市場需要の限界に達し、それを突破するのが困難であることを示唆している。 経済的懸念からEVの競争激化に至るまで、あらゆることがEVの減少傾向に寄与している」としており、今後も苦戦が続くだろうと予想しました。ただしテスラは別で、好調な売れ行きを維持しているようです。

 相対的に売れ行きが好調なのがハイブリッド車です。アメリカで最も売れている中古車となっているほか最も早く売れた新車トップ10のうち7台はハイブリッド車だったとのことです。