ダイハツ工業の試験不正が多くの車種で発覚、国内外の全車種で販売を停止するという異例の事態に発展しました。この不正は、およそ30年前から続いていたようです。

国内外・全車種出荷停止に

 ダイハツ工業(奥平総一郎社長)は2023年12月20日(水)午後、不正行為を調査する調査委員会(委員長=貝阿彌誠弁護士)の結果を公表。安全性能を担保する認証試験25項目で、175の不正が判明したことを明らかにしました。この対応として、現在国内外で生産されている全てのダイハツ開発車種の出荷を一旦停止するとしています。

 不正があった車種は、ダイハツブランドのほか、トヨタ、マツダ、スバルへOEM供給する車種も含まれ、64車種・3エンジンに及んでいます。

 64車種には18車種の生産終了車も含まれていますが、現行生産車で不正が判明した車種は2014年から始まり、最も新しい販売開始時期は2021年12月の6車種でした。それは以下の通りです。

・ハイゼットカーゴ(ダイハツ、デッキバン含む)
・アトレー(ダイハツ、デッキバン含む)
・ピクシス バン(トヨタ)
・サンバー バン(スバル)
・ハイゼット トラック(ダイハツ)
・ピクシス トラック(トヨタ)
・サンバー トラック(スバル)

 同社の不正は、2023年4月28日に海外市場向け車両で側面衝突試験の認証不正という形で明らかにされました。その後、5月19日に国内向け車両でも標識や電柱への衝突を想定したポール側面衝突試験に不正が拡大していることがわかり、調査委員会による調査へと移行しました。

「やむにやまれぬ状況に…」 ずさんな不正行為の実態

 調査委員会は不正の関与について「現場を担当する主に係長級のグループリーダーまでの関与が認められるにとどまり(略)、ダイハツが組織的に不正行為を実行・継続したことを示唆する事実は認められなかった」と断言しました。その一方で、

「安全性能担当部署及び法規認証室以外の者には『認証試験は合格して当たり前。不合格となって開発、販売のスケジュールを変更するなどということはありえない』というような考え方が強く...」
「不正行為に関与した担当者は、やむにやまれぬ状況に追い込まれて不正行為に及んだごく普通の従業員である」

 と、不正の原因を分析しました。

 ただ、報告書が記す同社の不正行為は、かなりずさんなものです。一部を抜粋します。

「運転席側の試験を実施する時間的余裕がなく、試験成績書には運転席側の試験結果として虚偽の数値を記載して、認証試験を行った」
「届出試験の時点ではエアバッグECU(電子制御装置)が開発されていない段階であったため、タイマーにより作動するように試験依頼表を作成した」

 調査委員会が行った12月20日の会見では、報告書で1989年から不正が長年行われており、管理職や経営幹部が知らなかったというのは「調査結果は甘いのではないか」という質問が出されました。