例年1月に開催される千葉県警の年頭視閲に毎年のように顔を出す「名物パトカー」があります。50年以上前に導入されたトヨタ「クラウン」とシボレー「カプリス」の警察車両、2024年は展示までされました。

千葉県警150年のうち3分の1現役なパトカーって!?

 千葉県警の「年頭視閲」が2024年1月16日に幕張メッセで開催。今年は元日に発生した能登半島地震の影響で、例年よりも規模を縮小しましたが、それでも約300人の警察官が会場に整列し、白バイや覆面パトカー、放水警備車などが参加しました。

 今年は県警150周年の節目ということで、佐倉市出身の歌手、荻野目洋子さんがサプライズゲストとして登場し国歌を斉唱。その後、県警トップの宮沢忠孝本部長らによる巡閲が行われました。このとき、宮沢本部長らが乗ったのは、他の都道府県警にはない唯一無二のオープンカータイプのパトカーです。

 今回の年頭視閲では、シボレー「カプリス」、クライスラー「ルバロン」、トヨタ「クラウン」の3車種計4台が用いられました。なかでも「カプリス」と「クラウン」はともに50年以上前のモデルで、いまでも現役で使われています。

 これら“儀仗車” は、例年なら式典終了後に比較的早い段階で県警本部へ帰ってしまうのですが、今年は車両展示に用いられ、来場者の注目を集めていました。

走行距離はパトカーとしては少なめ?

 展示されたのは「カプリス」と「クラウン」の2車種です。警察に詳しい人によると、この2車が展示されるのはおそらく初めてではないかとのことでした。
 
 古いのは「クラウン」の方で、1971(昭和46)年式だそう。これは通称「クジラ」と呼ばれる4代目モデルで、1971(昭和46)年から1974(昭和49)年まで販売されていました。千葉県警のオープンカーは、そのなかの2ドアハードトップ仕様をベースにした車体で、直列6気筒2000ccガソリンエンジンに4速マニュアルミッション搭載したモデルになります。

 50年以上前のクルマであるため、ドアガラスはパワーウインドウではなく、ハンドルを回して上下させる手動式で、とうぜんエアコンもありません。ハンドルやシフトノブには木目の装飾も。メーター周りを見ると、走行距離は39万6000kmを超えていました。

 一方の「カプリス」は、1973(昭和48)年ころの登録で、前出の「クラウン」より新しいとはいっても、こちらも50年選手であることは変わりません。

 モデルは2ドアコンバーチブルで、V型8気筒エンジンを搭載、これにコラムシフトの3速オートマチック変速機を組み合わせています。走行距離は25万kmを超えているものの、年頭視閲では巡閲の際などに宮沢本部長を乗せて走っていました。
 
 ただ、説明してくれた警察官いわく、運転はしにくいのだとか。理由は全長、全幅ともに大きく、死角が多いため気を使うからだそうで、取り回しは前出の「クラウン」の方がしやすいとのことでした。

実は赤色灯付けていても「緊走」できない!?

 しかし、警察官の話によると、維持整備については「カプリス」の方がまだ良いのだといいます。これは、国内にこういった外国車の専門店がいくつもあるほか、本国アメリカ含めファンも多いため、交換部品などが比較的まだ流通しているからだそう。

 逆に「クラウン」の方は、トヨタ製とはいえ、メーカーも保証を終えているほか、ディーラーや整備工場含め部品がほぼ流通していない状態のため、その点で苦労があると語ってくれました。

 そういった点などを考慮して、実は最近ヘッドライトを交換したのだそう。従来は四角い2灯式のヘッドライトでしたが、点かなくなると前面ガラスや内部の反射板などライト一式を全交換しなければならなかったため、4灯式に換装。これにより切れた球だけ交換できるようになったそうです。

 なお、この2車種はともに赤色灯を搭載しているものの、厳密には運用が異なるそうです。「クラウン」は緊急車両として登録されているため、公道上を緊急走行できるのに対し、「カプリス」の方はその登録がないため、緊急走行ができないといいます。
 
 確かに、よく見るとナンバープレートの分類番号(板上部の地名横に付く数字)が、「クラウン」は88、いわゆる「8ナンバー」と呼ばれる特殊用途自動車向けのものなのに対して、「カプリス」は33、いわゆる「3ナンバー」と呼ばれる乗用自動車向けのものでした。

 覆面パトカーなど一部の警察車両を除くと、パトカーは基本8ナンバー登録なので、その点で「クラウン」と「カプリス」は異なっているのが外見からもわかります

 いまや貴重な警察車両となった千葉県警の「クラウン」と「カプリス」。冒頭に記したように今年、千葉県警は150周年です。両車はそのうちの3分の1を現役で生き続ける「歴史の生き証人」といえる存在のため、もし万一、更新や退役となっても大事にされることを願ってやみません。