JR東海から引退したキハ85系気動車が、京都丹後鉄道の「KTR8500形」として再び走り始めます。どのような運用が予定されているのでしょうか。

元キハ85系が京都の海を走った!

 2024年3月5日、京都丹後鉄道が新車両「KTR8500形」の報道陣向け試乗会を行いました。天橋立駅から西舞鶴駅までの宮舞線をメインとした区間を約45分かけて走行しました。

 KTR8500形は、JR東海の元キハ85系気動車です。特急「ひだ」「南紀」などに使われたキハ85系は2023年3月にJR東海での運用を終え、うち4両が京都丹後鉄道に譲渡されました。

 この4両のうち、実際に運用されるのはKTR8501(旧キハ85-12)とKTR8502(旧キハ85-3)の1編成2両です。残りのKTR8503(旧キハ85-6)とKTR8504(旧キハ85-7)の2両は、部品取り車両として使われます。

 キハ85系はファンも多く、その気持ちを尊重した京都丹後鉄道は「85」という数字をそのまま形式名に残しました。改装なども必要最低限しか行っておらず、車内チャイムも変更していません。

 確かに、KTR8500形の見た目はキハ85系そのものといって良いでしょう。車体をよく見ると「JR」や「キハ」などの表記が変更されているものの、ほかはほとんど変わりありません。KTR8500形が天橋立駅に停車していると、一瞬ここがJR東海の駅であるような錯覚に陥りそうになります。

 試乗会で走行した区間には奈具海岸、由良川橋梁などの絶景ポイントがあります。大きな窓と、座席が通路から一段高く設置されているハイデッカー構造で風景を楽しみやすいキハ85の良さを活かせる区間です。

 試乗会の日はあいにくの雨でしたが、それでも窓ごしに雨に煙る海や山の風景を楽しむことができました。また、沿線では鉄道ファンや地元の人がカメラやスマートフォンを向ける姿がちらほら見られ、KTR8500形への関心の高さがうかがえました。

「たんごリレー」やイベント列車として運用予定

 京都丹後鉄道は2024年3月16日のダイヤ改正から、KTR8500形を特急「たんごリレー」に使います。また、今後はイベント開催時の臨時列車としての運行も予定しています。

 KTR8500形が充当される特急「たんごリレー」は、福知山駅で、京都や大阪から来るJR特急「こうのとり」「きのさき」と接続する列車です。

 試乗会が行われた2024年3月5日現在、「たんごリレー」には「丹後の海」の愛称を持つKTR8000形が運用されています。「丹後の海」は一部が特急「はしだて」としてJRの京都駅まで乗り入れています。「……ということはもしかして」と確認したところ、KTR8500形は「はしだて」として運行する予定はないとのことでした。

 京都丹後鉄道はこのほか、特急用の予備車両としてKTR001形「タンゴエクスプローラー」を所有しています。しかしこの車両は老朽化で検査・修繕が困難になったことから2017年に使用休止になりました。時期は未定ですが、廃車が予定されています。

 また、今後追加でキハ85系の譲渡を受ける計画もないそうです。

 京都丹後鉄道では、2024年4月12日に宮津〜西舞鶴間が開業100周年を迎えます。また、3月16日には北陸新幹線の敦賀延伸、2025年になれば大阪・関西万博と、人流増加が期待できるイベントも控えています。

 同社は今後、KTR8500形を最大限に活用し、利用者の満足度向上、沿線の観光需要創出や地域活性化に貢献していきたいと考えているそうです。