ターミナルビルからバスに乗って機体のそばまで行き、そこから乗り込む「沖止め」。しかし、場合によっては「沖止め」が、ターミナルから直接乗り降りするのと比べて楽に乗り降りできるケースも存在します。

羽田ではT1&T2の空港ビルを拡張

 羽田空港のJAL(日本航空)やスターフライヤー国内線などが発着する「第1ターミナル」において、北側に「サテライト」と呼ばれる新たな出発・到着ゲート施設を設置する工事が始まっています。ここは従来、ターミナルビルと直接つながっていない駐機場「オープンスポット」、通称「沖止め」と呼ばれる場所でした。

「沖止め」の発着では、ターミナルビルからバスに乗って機体のそばまで行き、そこから乗り込む方式が広く知られています。ビルから搭乗橋経由で直接乗降する方法よりも面倒で、一般的には好まれないでしょう。しかし、場合によっては「沖止め」の方がラクに乗り降りできるケースも存在します。

 大きな空港では、ターミナルビルの規模はそれ相応に広くなる傾向にあります。多数の駐機場を持つ羽田空港を例にあげると、同空港の第1ターミナルは端から端まで800m以上、「コ」の字型をしている第2ターミナルは1km以上にもなります。こうしたケースでターミナル端の駐機場に停まる旅客機に乗り込むとなると、保安検査場から少なくとも数百メートルの距離を歩くことになるわけです。

 その一方で羽田空港などの「沖止め」便は、第1ターミナルはA検査場、D検査場の近くの1階部分に、第2ターミナルはA検査場近くの1階部分に搭乗ゲートが集められ、そこから改札を行い、バスへと乗り込みます。そうなると歩行距離としては、ターミナル端の駐機場から直接乗り込むより短く済みます。

 しかし今後、第1ターミナルはサテライトの建設で北側に大きく伸び、第2ターミナルは、北側にある本館とつながっていない別棟が、将来的に接続され、ひとつの大きなターミナルビルになる予定です。そうなると、やはり長い距離を歩くケースも出てくるのでしょうか。

「ターミナル直」「沖止め」どう使い分けしている?

 仮に第2ターミナルの本館と別棟がつながった場合、最も南の駐機場から別棟の北の端までの距離が1.5km以上になると試算されます。現別棟を発着する便を利用するとなると、もっとも現別棟に近いA検査場を使用しても、そこからさらに500m程度の距離を歩くことになりそうです。

 もちろんターミナルを端から端までわざわざ歩くケースはめったになく、道中には動く歩道などの補助設備はあるものの、場合によってはバスで直接機体へ連れて行ってもらえるほうが楽なケースも考えられるでしょう。

 なお、どのスポットを使うか決めるのは航空会社ですが、必ずしも利用者の数で決めるわけではないようです。スポットはそれぞれの飛行機のサイズや、その飛行機が次のフライトに出発するまでどれくらい駐機するかなどを考慮して決められます。そのため多くの人が乗る幹線便でも、しばらく次のフライトがない時などは沖止めになることもあります。

 運航事業者によっても沖止めの使い方は異なります。LCC(格安航空会社)では搭乗橋使用料を節約するため、空港によっては沖止めを積極的に使う傾向があるほか、政府専用機などの国賓、公賓を乗せたフライトも、保安上の観点から沖止めになることが多いです。