能舞台で立ち振る舞う、悲しくも美しい女性武者…。ユネスコの世界無形文化遺産である伝統文化 “能楽”で、女性能楽師がふるさと富山で “シテ(能舞台での主役)” を披露します。能の演目は平家物語の「巴」。武勇に優れたがゆえの “主君への忠誠心と愛情” を女性ながらのしなやかさで演じます。23日の本番を前に意気込みを語りました。

富山能楽堂(富山市)

故郷で初の “シテ” を演じるのは、富山市出身で東京在住の能楽師、葛野りささんです。

葛野さんは1989年(平成元年)富山市生まれで、東京都板橋区在住です。東京藝術大学を卒業し、20代宗家宝生和英に師事、同門の「かづらの会」を主宰、東京や千葉などで教室を構えています。

「巴」シテ 葛野りささん(富山市出身)

初舞台は2012年の「清経」で、2017年には「田村」で初めてシテを担当しました。

地元で能をできる事を本当に嬉しく思う…

能「巴」では、平家物語に登場する女性武者の強さと主君への一途な思いを描きます。木曽義仲に仕え、長刀を手に獅子奮起の働きを繰り広げますが、源平合戦で源義経の軍に追われ、琵琶湖畔で木曽義仲に落ち延びるよう命じられます。

主君である義仲との今生の別れに、後ろ髪を引かれる心境で木曽路を落ち延びていった巴御前…。

見せ場は、主君への忠誠心と愛情が表れる巴御前の霊…。出会った旅の僧との問答から一転、謡への展開です。自身よりも木曽義仲を弔うよう頼む巴御前。武者として生涯を全うすることができないわが身を嘆き、主君とあの世で再び会うことを願う女心と回向の念です。

能楽師 葛野りささん:「私が富山でシテを勤めるのは初めての事です。念願叶ってついに地元で能をできる事を本当に嬉しく思っています。精一杯勤めたいと思っております」

TUT

葛野さんがシテを演じる能「巴」は、今月23日に富山能楽堂で開催される富山県宝生会主催の「春季能楽大会」で披露されます。

写真提供:宝生会
写真提供:宝生会