小林製薬の『紅麹』を使ったサプリメントを摂取した人に健康被害が出ている問題で、新たに2人が亡くなっていたことが分かりました。問題が拡大するなか、28日に株主総会が開かれ、最初の症例報告から事態の公表までに2カ月かかったことや、管理体制に批判の声が上がりました。

■岸田総理「あらゆる対応を検討」

参議院予算委員会では…。

立憲民主党 辻元清美代表代行
「『紅麹問題』健康被害ですが総理、昨日まで死亡者が2名だったのですが、また増えたようですね。報告を受けていますか」

岸田文雄総理大臣
「昨日までの報告に加えて本日、死亡との関連が疑われる事象が追加で2件あったことが明らかになり、報告を受けています」

立憲民主党 辻元清美代表代行
「原因究明はこれからですけど、死者がどんどん増えているんですよ。制度(機能性表示)の見直しも含めて、審議会で議論いただきたいと思いますがよろしいですね」

岸田文雄総理大臣
「原因をしっかり明らかにして、必要であるのならば、あらゆる対応を検討しなければならないと考えます」

海外でも回収が始まるなど、日本国内だけの問題ではありません。

林芳正官房長官
「把握した情報について、WHOへの情報提供や、在外公館を通じた外国政府への情報提供を実施しております」


■全員が『紅麹コレステヘルプ』接種

小林製薬の紅麹が死因に何かしら関連していると疑われているケースは4人に増えました。1人目は2021年4月から今年2月まで、紅麹コレステヘルプを購入していました。腎臓の疾患により、今年亡くなりなりました。2人目も生前に摂取していて、検死の結果、腎臓にダメージがあったといいます。そして、新たに判明した3人目、腎疾患を伴い亡くなりました。4人目も、2021年ごろに紅麹コレステヘルプを使用していました。

名古屋大学大学院 柴田玲特任教授
「腎臓は沈黙の臓器といわれている。理由は自覚症状が基本的にはない。一般的には腎臓の機能が7割くらい落ちてしまって、機能が3割くらいになって初めて自覚症状として様々な症状が表れる。かなり腎障害が進んだステージになって初めて、体調不良で病院に相談をすることになると思う」

異変が出ている年代は30〜70代と幅広く、性別による違いも今の所確認はできていません。


■“倦怠感”や“気持ち悪さ”などの症状

病院に来た患者はどういう状態だったのでしょうか。現在、経過観察中の60代女性のケースです。

新橋日比谷通りクリニック 吉原秀樹院長
「倦怠感が中心で、血圧はやや高めですが重症というほどの血圧ではなく、軽度の高血圧。コレステロールがよく下がって、2年間続けたということでした」

血液検査の結果、通常は1.0以下のクレアチニン数値が高くなっていました。クレアチニンは腎臓でろ過される老廃物です。

新橋日比谷通りクリニック 吉原秀樹院長
「(Q.この女性の数値は)1.5ぐらいですね。1.5になると将来的に2.0、2.5と進んでいく患者さんが相当数いるので、十分に注意しなくちゃいけないレベルの数値」

もう1人のケースも。年齢などは非公表ですが、こちらは2度入院した方です。最初は「気持ち悪い」という症状でした。

富士市立中央病院腎臓内科 高橋康人部長
「消化器症状があって受診されて、採血で高度な腎機能障害を認めた。数週間で退院できている。ただ、その当時、我々は紅麹が原因とは考えておらず、脱水に伴う急性腎障害。このような診断で対処した」

しかし、退院後しばらくしてサプリの摂取を再開したところ、1カ月ほどで再入院となってしまいました。

富士市立中央病院腎臓内科 高橋康人部長
「入院中は紅麹コレステヘルプの内服をストップしているので、もしかすると、それにより腎障害が改善した可能性があると考えている。その後、外来加療の経過の中で体調が戻ったとのことで、紅麹コレステヘルプの内服を再開しているが、その後、急性腎障害を再度発症して再入院した」

医師が指摘する、健康になるために飲んだサプリで不健康になった可能性。厚生労働省は28日、調査会を開きました。今後、小林製薬及び他社のも含めて、紅麹について調べることになります。

小林製薬信頼性保証本部 渡邊淳本部長
「(Q.亡くなられた方も出ていますけど)本当にそれは残念なことというか。それはきちっと真摯に対応したいと思っておりますので」


■株主総会“対応の遅さ”に批判

一方、小林製薬のある大阪では株主総会が開かれ、約60人の株主が参加しました。

小林製薬 小林章浩社長
「お亡くなりになりましたお客様のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げます。健康被害にあわれましたお客さまにおかれましては、早期の回復をお祈りいたします。この度は申し訳ございませんでした」

株主が問題したのは、事態の把握から発表まで2カ月かかったことでした。

株主
「2カ月間もね、医者から電話あったんでしょ。こういう事例があって、どうなんですかと。その時に動かないと」
「小林製薬の危機管理体制がメディアなどでもかなり言及されていると個人的には思っているんですが」

小林製薬 小林章浩社長
「2月に私が最終報告を受けた時は、原因の関連性が乏しく、その時点で回収という判断はできませんでした。そこからの探求が難しく、今回のタイミングになった。遅かったわけでございますが、力不足で申し訳ないと思います」

小林製薬の株価は、今回の件が起きてから20%下がりました。今後を危惧する声も…。

株主
「完璧な対応をするとなると、莫大な金額になる。保険に入っていて、保険で全部賄える、大丈夫だという裏付けあるのか」
「社長として今後、どういったビジョンを持っているのか。気持ちだけでもお聞かせください」

小林製薬 小林章浩社長
「社内も落胆しているところもあると思うが、我々は新製品を開発して、皆さんに喜んでいただく会社なので、それをしっかりと…」

参加した株主
「社長が泣いてしまうと、その後、質問できないしね」

小林製薬は29日、再び会見を行うとしています。