能登半島地震による土砂崩れで寸断された国道249号。いまだ土砂は残されたままの状態です。かつては海底で、地震によって隆起した海岸部分に迂回路が整備され、2日、開通しました。全国的にも珍しい構造です。

国道249号は、能登半島の沿岸部にぐるりと張りめぐらされています。土砂崩れで通行止めとなっていた5カ所のうち、2日は、輪島市の南志見地区で通行が可能になりました。

当面の利用は、緊急車両や工事車両、そして、付近の住人の車に限られます。

2日に行われた説明会。地元を離れて、避難生活を続けていた人も駆けつけました。

金子長継さん(62)もその一人。自宅の修理を頼もうにも、業者は予約でいっぱいです。現在、金沢で暮らしています。
金子長継さん:「4カ月ぶりに通れるようになりました」

今月14日にも入居が始まる仮設住宅に入れることが決まりました。ここから生活を立て直します。
金子長継さん「消防団員なので、その関係もある。最終的には、南志見に、もう1回、基盤を作ろうかなと」

ただ、街を出た全員が戻ってくるとは限りません。

地震発生10日目。石川県は、孤立状態が長引くことを見越して南志見地区の集落まるごと避難を決めました。あれから濱高泰子さん(82)は、金沢市の体育館にいます。
濱高泰子さん:「あと短い人生。やり直しできるかな。そんな力ないわ。ガクンときたね。山も畑も田んぼも、みんな壊れて、荒れて。だから行くにも行かれない」

一緒に避難してきた仲間も散り散りに。金沢市に新たな拠点を構えた息子のもとに行くことを決めました。

徐々に、インフラは回復しつつあるとはいえ、ここに来て、また、新たな課題です。

輪島市の水道復旧率は、87.6%。残りも今月末には復旧する見込みです。でも、この水道復旧率、住宅敷地の給水管は含んでいません。

敷地内の修理は、所有者が行わなければならないため、地元の業者に工事の依頼が集中していました。
水道業者・浦野文和さん(58):「(Q.抱えている件数は)40〜50くらい。それ以上はカウントしない。カウントしたら頭いっぱいになるし、もう無理。それ以上、回られない」

1日に2〜3件、回るのが、やっとです。

石川県のホームページには、輪島市の住人に向けた業者の一覧があります。ところが『対応困難』との記載が並びます。そこで被害の少なかった地域からも対応可能な業者を募って、リストに載せました。
水道業者・浦野文和さん(58):「このホームページを見て依頼してくる70〜80代の人たちは、ほぼいないと思う」

実際、協力を申し出た金沢のある業者に聞いたところ、工事の依頼は0件。相談の電話すら鳴っていないそうです。

周知が行き届いていないことに加えて、費用の問題もあります。例えば、2人の作業員が、金沢から輪島へ日帰りで工事に行った場合、交通費などの出張経費が少なくとも3万円、かかるそうです。その費用は、修理を依頼した人の負担となります。

水道業者・浦野文和さん(58):「ほかからも呼び寄せて分担してできれば、もっと早く復旧できる。きっと予算もかかる。その予算が、なぜ回ってこないのか。能登、切り捨てかな」

こうした現状に、馳知事は1日、こう述べました。
石川県・馳浩知事「自分の市町の他から(業者が)来たら、かかり増し経費が必要。県でこの分を負担軽減してあげられないかと。いま、県庁内でも調整し、政府側とも折衝しています」