国の特別天然記念物・ニホンライチョウの人工孵化ふかに取り組む富山市ファミリーパークで28日、野生の雄との人工授精で産まれた卵から、2羽のヒナが誕生した。野生の雄の精液を用いた人工授精の成功は、全国で初めての快挙だ。

 同園は環境省と日本動物園水族館協会の計画に基づき、ライチョウの繁殖技術の確立に取り組んでいる。今年度、初めて野生の雄との人工授精に取り組んだ。

 職員らは5月25、26日、北アルプスの乗鞍岳を訪れ、雄3羽から精液を採取。同園で飼育する雌5羽に精液を注入した。その結果、6月5日までに4羽が卵12個を産卵し、28日未明から午前にかけて2羽が誕生したという。

 人工授精自体は2021年度以降、東京都の上野動物園や横浜市繁殖センターで成功している。だが、近親での交配が続いた場合は病気になりやすくなるなどの懸念があった。今回、野生の精液を使うことに成功し、後の世代に多様な遺伝子を残せると期待されている。

 同園によると、ヒナは孵化後2週間は体調を崩しやすく、動物課の岸原剛課長代理は「多くの人の協力で実現し、孵化は一つのハードルのクリアだ。いつも以上に神経を配ってヒナが大人になるまで、園として頑張りたい」と話した。