政府は、2025年に実施する公的年金制度改革で、国民年金の保険料納付期間を現在の40年(20〜59歳)から5年延長して45年(20〜64歳)とする案を見送る方針を固めた。延長は年金額が増える利点があるが、追加で保険料負担を求めることは国民の理解を得にくいと判断した。

 複数の政府関係者が明らかにした。24年度の基礎年金の受給額は年81・6万円で、厚生労働省が3日に公表した年金の財政検証では、納付期間を5年延長すれば、将来的に約10万円増える。

 年金額をその時の現役世代の平均手取り収入と比較した所得代替率でみると、6ポイント以上の押し上げ効果があって老後保障が手厚くなるものの、5年間の追加の保険料負担は総額約100万円が見込まれる。国民年金は半分が国庫負担のため追加財源も必要となる。

 政府は25年の年金制度改革案として、厚生年金の加入者を増やして年金の支え手を増やすことや、年金額の上昇を抑制する仕組みの改善なども検討している。改革案の中でも、納付期間の延長は国民の負担増が目立ち、批判を招きかねないため、今回は除外してほかの施策を優先する方針だ。