今年3月、日本を訪れた外国人観光客は単月で初めて300万人を突破した。歴史的な円安の影響もあり、この勢いはとどまる気配がない。そんな中、大阪府が外国人観光客から“徴収金”をとる制度の導入を検討していると表明し、物議を醸している。府はオーバーツーリズム対策を理由としているが、国内外から懸念の声があがり、議論の行方が注目される。

■吉村知事「オーバーツーリズムの解決」 宿泊税も引き上げを検討

大阪府 吉村洋文 知事(3月6日)

 「外国人観光客に快適に大阪を楽しんでいただきたい。一方で、オーバーツーリズム対策や街の美化もやっていく必要がある。それを解決するための施策を打つ財源として一定、外国人観光客の皆さんに負担をお願いしますということをやるべきだと思う」

 大阪府の吉村洋文知事は今年3月、外国人観光客への「徴収金」制度を導入する意向を明らかにした。

 アフターコロナで外国人観光客が急増している上に、来年4月に開幕する大阪・関西万博、その後のカジノを含む統合型リゾート(IR)で外国人観光客のさらなる増加が見込まれることなどから、オーバーツーリズム対策や街の美化のために、大阪を訪れる外国人観光客に徴収金の負担を求める制度を検討するという。

 大阪府では、すでに2017年から「宿泊税」を導入しており、府内のホテルなどに宿泊する利用者らに対して、1人1泊あたり、7000円以上1万5000円未満の場合は100円、1万5000円以上2万円未満は200円、2万円以上は300円を徴収している。大阪府は徴収金制度と並行して、宿泊税の引き上げについても検討している。

 インドネシアのバリ州では、すでに徴収金制度を設けているとして、大阪府は他国の事例も参考にしながら導入可能か判断し、開始時期については、早ければ万博が開幕する来年4月を目指すとしている。

■博覧会国際事務局長「開始時期を考慮すべき」有識者も「外国人に不平等な扱い」

BIE ケルケンツェス事務局長(4月10日)

 これに対し「待った」の声をかけたのが、フランス・パリに本部を置くBIE(博覧会国際事務局)のケルケンツェス事務局長だ。

 4月、万博開幕1年前に合わせて来日した際、徴収金制度について、「万博を訪れるために訪日を検討する外国人が『歓迎されていない』と受け取られかねない。開始時期を考慮すべき」などと苦言を呈したのだ。

 また、大阪府は4月24日に「徴収金」制度を検討する有識者会議の初会合を開いたが、委員からは「外国人のみを対象とした税制度がなく、宿泊税を引き上げる方が生産的」とする意見や「租税条約や日本国憲法では、不平等や差別的な扱いは許されない」との指摘も上がった。

 外国人観光客への徴収金により、本当に、魅力ある観光都市へと変貌を遂げることができるのか。早くも賛否が分かれる中、制度の行方が注目される。