ぼくはポッキー。聴導犬(ちょうどうけん)だよ。耳が聞こえないパートナーのけいちゃん(五十嵐恵子(いがらしけいこ)さん)が、ぼくのことを絵本にしてくれた。聴導犬をたくさんの人に知ってほしいからだって。絵を描いてくれたのは、けいちゃんの友だちで手話通訳士(しゅわつうやくし)のゆきよさん(酒井幸代(さかいゆきよ)さん)。とてもかわいく描いてくれたよ。君にも読んでほしいな。

 聴導犬って知ってる? 盲導犬(もうどうけん)はよく知っているよね。聴導犬は、けいちゃんみたいに耳が聞こえない人に、いろいろな音を知らせる仕事をしているんだ。目覚まし時計のアラーム、インターホン、キッチンタイマー……。音が鳴ったら聞き分けて、けいちゃんをその音が鳴ったところへ連れていくんだよ。

 家の外にもいろいろな音がある。けいちゃんはぼくと出会う前、とても怖い思いをしたんだって。道を歩いていたら、後ろからきた自転車に気づかず、ぶつかりそうになった。ベルの音が聞こえなかったのに、怒られた。耳が聞こえないのは、姿を見てもわからないからなあ。

 今はいっしょにいるぼくが「聴導犬仕事中」というゼッケンを付けているから、わかってくれる人もいるよ。でも、けいちゃんが食事をしようと店に入ろうとしたら、「ペット同伴(どうはん)は……」と断られた。ぼくはペットじゃないのに。盲導犬と同じ補助犬(ほじょけん)だから、電車にもいっしょに乗るし、病院にもついて行く。だって、けいちゃんにはぼくが必要だから。法律でも認められているんだよ。

 ぼくはトイプードル。毛が抜けにくく、物覚えもいいので、聴導犬に向いているらしい。滋賀県に盲導犬は11頭いるけど、聴導犬はまだ4頭。

 2009年に京都で生まれ、滋賀県の「びわこみみの里」(滋賀県守山市)で聴導犬の訓練をうけて試験に合格したんだ。けいちゃんと出会ったのは1歳のとき。それからはずっとけいちゃんといっしょ。

 今年の誕生日が来たら、ぼくは15歳になる。そろそろ引退かな。なので、2歳のパルムがいっしょに暮らしながら訓練をしている。同じトイプードル。この夏の試験に合格できるといいな。パルム、がんばれ。

 絵本が完成したとき、けいちゃんはうれしくて枕元において寝ていたよ。ゆきよさんも「絵本をつくるのが子どものころからの夢だった」と喜んでいた。けいちゃんは「この絵本は、これまでがんばってきてくれたポッキーへの恩返しだよ」と言ってくれる。ぼくがいたおかげで、たくさんの人たちとの縁ができたんだって。ぼくもけいちゃんに「ありがとう」と伝えたいな。

 この絵本を読んでくれたら、聴導犬の仕事や訓練の様子、けいちゃんとの出会いやきずなもわかってもらえると思うよ。

 税抜き2千円。発行はサンライズ出版(0749・22・0627)。(武部真明)