「娘の内縁夫」の逮捕でいよいよ構図が鮮明になってきた那須焼損殺人事件。既に6人が逮捕され、さらなる捜査が着々と進む。金に溺れた彼らの末路はどうなるのか。首謀者は極刑? “報酬250万円”で実行役となった二人の運命は?

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 東京・上野で14軒の飲食店を経営していた実業家・宝島龍太郎さん(55)、幸子さん(56)夫妻が殺害されて1カ月がたった。

「二人と出会ったのは、もう20年近く前になるかな」

 と語るのは、宝島夫妻の飲食店のさる取引先業者である。

「マスター(龍太郎さん)が上野で店を開いた初期の頃です。ママ(幸子さん)も含めて、多少中国訛りだけど日本語は上手だった。近隣店とのトラブルがいろいろ報じられていますが、優しい人たちでしたよ。うちの息子が子どもの時は店に行くと“お菓子でも食べな”と1000円くれたりね」

 仕事上のトラブルもなく、

「支払いが遅れることは一度もなかった。宝島さんのところは15日と30日が支払日で、事前に金額を伝えて店に行くと、現金で用意されている。他の店は納入から入金まで2カ月はかかるから助かったよ」

事件の1カ月前に“異変”が

 この業者氏は首謀者とみられる関根誠端(せいは)容疑者(32)、つまり宝島夫妻の長女の内縁の夫とも付き合いがあった。

「2年くらい前からかな、店で働くようになって。腰が低くて礼儀正しいし、夫妻のことを“パパ”“ママ”と呼んで、慕っている様子でした」

 しかし、事件の1カ月ほど前、ある変化が。

「上野の店で関根くんと話していたら急に“ちょっと来て”と外に連れて行かれ、“GWが明けて繁忙期が過ぎたら辞めるから”と。で、俺の店で使ってよなんて言っていたな。冗談かと思っていたら、ママが近付いてきて、それに気付いた関根くんが“じゃあ”とその場を離れた。何か深刻なことになっているんだなと思ったよ。ママには後で“何話していたの”と聞かれたけど口を濁しておいた」

 その頃、既に両者の間では、店の経営や金にまつわるトラブルが勃発。それが事件の原因になった。当局はそうみているというわけだ。

共謀共同正犯

 現在、逮捕されているのは関根容疑者に加え、前田亮(36)、佐々木光(28)、平山綾拳(りょうけん・25)、姜光紀(カングァンギ・20)、若山耀人(きらと・20)の計6名である。

 殺害を首謀したのは関根容疑者で、犯行現場とみられる空き家に夫妻を連れて行ったのが前田容疑者。関根容疑者から報酬を受け取り、平山容疑者に指示を出したのが佐々木容疑者で、平山容疑者が車や殺害道具を準備し、姜容疑者と若山容疑者に実行を依頼――これが当局のみる“役割分担”だ。

 また、平山容疑者の供述によれば、報酬は合わせて1500万円。取り分は佐々木容疑者が100万円、自身が900万円、姜容疑者と若山容疑者が250万円ずつだという。

 当初、6人の容疑は死体損壊だったが、11日、平山容疑者が殺人容疑で再逮捕された。

「今後、残り5名も殺人容疑で再逮捕されるのは確実です。現在の捜査によれば、実際に手を下したのは姜と若山で、関根、前田、佐々木、平山が犯行現場にいたかどうかはまだ不明。とはいえ、当局はその4名について、殺害の実行行為がなかったとしても謀議を行った事実があり、共謀共同正犯として殺人罪に問えると判断しているのです」(社会部記者)

6人の量刑は

 ではこの見立てのまま、彼らが“同じ罪”で起訴された場合、果たして6人の量刑はどうなるのか。殺しを主導した関根容疑者と、金に目がくらんだ他5人は“同じ罰”を受けることになるのか。

「原則で言えば、最も量刑が重くなるのは、首謀者である関根になるでしょう」

 とは、元検事で弁護士の落合洋司氏である。

「殺人の被害者二人というのは、死刑と無期刑のボーダーラインとされています」

 他の容疑者について元東京高検検事の川口克已弁護士は、

「実行部隊の司令塔的立場ともみられる佐々木についても、関根と同様、死刑か無期となってもおかしくない。有期刑に落ちたとしても、上限の30年に近い数字が考えられます」

 さらには、

「実行犯の姜と若山については死刑や無期の可能性もありますが、殺害手段などにつき、彼らの裁量による余地が少なければ減軽され、20年ないし30年の有期刑にとどまることもあるかもしれません。仲介役の平山についても自首していることから減軽も考えられ、20年前後の可能性もある。前田についてはやや従属的な関与の可能性があり、20年以下ということも考えられますね」(同)

 いずれにせよポイントは、

「それぞれの役割や積極性、利得の多寡、事件解決への貢献具合。これらがどう評価されるか。そのため、6名が互いに罪をなすり付け合うような供述をすることは大いに考えられます」(落合弁護士)

 と言うのである。

「同じ皿で飯を食べることに抵抗のない間柄なんだな、と」

「宝島夫妻は関根のことを“セヤくん”と呼んでかわいがっているように見えましたけどね」

 とは、宝島家を知る関係者。

「昨年、三人と一緒に食事をした際、少し驚いたのは、何か注文すると取り皿に分けず、みんなで箸で突いて食べるんです。同じ皿で食べることに抵抗のない、それだけの間柄なんだな、と」

「週刊新潮」2024年5月23日号 掲載