国史跡「田儀櫻井家(たぎさくらいけ)たたら製鉄遺跡」の中でも、江戸中期から明治初期にかけて海運で栄えた「越堂(こえどう)たたら跡」を中心に紹介するガイダンス施設が島根県出雲市多伎町に完成した。遺跡調査の成果や、同家の製鉄経営の特色が学べるパネル展示などがある。

 日本海に近い越堂たたらは、和船で砂鉄や木炭を調達し、生産した鉄を全国に出荷。海と山のたたらを同時に営んだ同家でも中心的な存在で、幕末には同家は、出雲国でも1、2を争うほど栄えたという。

 遺跡が2006年に国史跡に指定され、市は越堂たたら跡の整備事業を20年に開始。22年度には、跡地に製鉄炉や天秤(てんびん)ふいごなどを復元した。今回のガイダンス施設はその近くに23年度、約7千万円で整備。遺跡の製鉄炉の地下構造「床釣(とこつ)り」を、立体的にはぎ取って展示したほか、模型で紹介。近隣の聖谷(ひじりだに)と朝日の二つのたたら跡、宮本鍛冶山内(かじさんない)遺跡なども紹介している。

 14日にあった開館式では、多伎町いさり火太鼓同好会による太鼓の演奏があり、関係者がテープカットをして祝った。入館無料、開館時間は午前9時〜午後5時(12月29日〜1月3日は閉館)。(中川史)