伊勢神宮を参拝する愛子さま。お召しの白いロングドレスの参拝服が美しい=3月26日、三重県伊勢市、朝日新聞社

 天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが26日、皇室の祖先とされる天照大御神を祭る伊勢神宮(三重県伊勢市)を参拝した。集まった地元の人からの「愛子ちゃん」という歓声に、穏やかなほほ笑みをみせた愛子さまだったが、一方で伊勢神宮への参拝は皇室にとって大切な祭祀。専門家によると、参拝に臨む天皇や皇族方には、かなり厳しい決まり事があるのだという。

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「神の住まう神域」とされている伊勢神宮の境内。

 皇室に詳しい京都産業大の所功名誉教授によれば、参拝とは、日常的な「俗世」と神の住まう「聖なる世界」の境を出入りすること。そのため、愛子さまらは参拝の前に、古式にのっとりお手水によって身を清められるという。

「ただ皇居の宮中三殿での祭祀ではお風呂などに入るわけではありません。お着替えをする綾綺殿(りょうきでん)でお湯で手足を身を清められると言われています」
 

 また、天皇や主要な皇族が伊勢神宮に参拝するときは、内宮の境内にある天皇家専用の宿舎「行在所(あんざいしょ)」に泊まることになっている。

 2014年、当時12歳だった愛子さまは、初めて伊勢神宮に参拝。このときは「心穏やかに参拝できるように」と、当時の皇太子ご夫妻と行在所でひと晩を過ごし、朝食なども神宮で召し上がった。

 行在所に宿泊する天皇や皇族方は、起床してすぐに潔斎を行い、参拝の前にもお手水で身を清めるのだという。
 

伊勢神宮の外宮を参拝する愛子さま。雨の日の祭典に欠かせない和傘は貴重な工芸品だ。白いロングドレスの参拝服が和傘に映える=3月26日、三重県伊勢市、朝日新聞社

■牛乳やバター、洋食もOK

 伊勢神宮への参拝において、特に境内での食事では、口にしてはいけない食材がいくつかあるという。

 どんなものが食べられないのか。皇室と神宮の食物に詳しい研究者によると、牛や豚の肉は避けられ、食材に用いることはないが、鶏肉は使うことができる。

 神様にお供えする「神饌」(しんせん)に供される食材であれば、口にしても構わない。メインになるのは魚や貝類で、避けなければならない食材を除けば、メニューは和食でも洋食でも問題はない。

 牛乳やバターは口にしてもよい。意外な印象を受けるが、朝食にパンとバター、牛乳を召し上がって参拝に臨む皇族方も珍しくないようだ。

 秋篠宮家の長男、悠仁さまは22年、伊勢神宮をおひとりで参拝。このときは内宮・外宮への参拝を前に神宮内の斎館で、決まり事に従って昼食を召し上がったという。 
 

 26日の参拝をつつがなく終えた愛子さまは、翌27日には県内の斎宮歴史博物館と、いつきのみや歴史体験館をそれぞれ訪問した。

 所功名誉教授によれば、古代から中世まで、皇室から皇女や皇孫女が『斎王』として伊勢に遣わされた。斎宮は、神宮の大事な祭祀に奉仕するために常駐した場所。代々の斎王は、衣食住にわたって厳しい決まり事が定められ、慎ましい生活を送っていたという。
 

 愛子さまは大切なお務めを終えて、ほっとしたのだろうか。

 斎宮博物館で、伊勢物語の中の絵巻について職員から「斎王のラブロマンス」と説明を受けた愛子さまは、斎王の恋愛が「タブーですか?」と質問。その場は柔らかな空気に包まれたようだ。

(AERA dot.編集部・永井貴子)