相続に当たって忘れてはいけない存在に、相続税があります。相続においては「自分がいくら相続できるか」、「どのように遺産分割するか」にスポットが当たりがちですが、現実にはそれと同じかそれ以上に、相続税の有無やその取り扱いが重要になります。そこで、相続税について考えていきます。

5000万円にかかる相続税はどれくらい?

相続税は、相続財産が1円でもあればかかるというわけではありません。「基礎控除」という、その範囲内なら非課税となる枠組みがあります。
 
この基礎控除の額は(3000万円+法定相続人の数)×600万円となり、最低でも3600万円までは相続税がかからないのです。
 
では、兄弟3人が5000万円の財産を相続した場合、相続税はどれくらいかかるでしょうか。この場合、基礎控除の額は4800万円となり、5000万円の相続財産のうち200万円の部分に相続税がかかるわけです。
 
そして、課税部分200万円にかかる税率は10%(1000万円までは10%の税率が適用)と決まっています。単純計算で、かかる相続税の総額は20万円となるわけです。
 

債務がある場合は、相続税がかからないこともある

相続税を計算するに当たっては、債務や葬式にかかる費用を控除することができます。
 
極端な話ですが、5000万円の相続財産があっても、同時に親が5000万円の借金を残していれば、相続税はかからないことになります。
 
また、葬式の費用も同様に、課税される財産の額から差し引くことができます。仮に葬式に100万円かかったとしたら、先の例での課税対象となる部分は100万円に減ります。そして、発生する相続税は総額10万円となるわけです。
 
このように、相続税の計算に当たっては、債務や葬式費用を差し引くことができます。特に葬式費用は10万円や20万円という額では済まず、100万円超がかかることもあります。その点を考えると、兄弟3人で5000万円の財産を相続しても相続税は0、ということは決して珍しくありません。
 

相続税は10ヶ月以内に、申告から納付までを済まさねばならない

相続税の申告と納税は、亡くなった方の死亡を知った日(通常の場合は、該当者の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。例えば、9月7日に死亡した場合には、その翌年の7月7日が申告期限になります。
 
万が一、期限内に納税まで行うことができないと、利息に相当する延滞税がかかることもあるので、注意が必要です。また、相続税は金銭で、かつ一括で納めることが原則ですが、一定の要件の下、延納(年払いで納税すること)や物納(相続財産で納税すること)も認められています。
 
相続税を納めるに当たり「金銭で」、かつ「10ヶ月以内に納税」という2点がネックとなることは珍しくありません。特に、相続財産から納税しようと思っている場合、不動産など分割や換価の難しい財産が多いと、思うように納税資金を用意することができない場合もあります。
 
なお、申告や納税を行う先は、亡くなった方の住所地を管轄する税務署になります。自身の住所地を管轄する税務署ではありません。
 

まとめ

5000万円の相続財産がある場合、兄弟3人でそれを相続すると、最大20万円の相続税が発生する可能性があります。とはいえ、債務や葬式費用などを勘案すると、相続税が0である可能性もあるでしょう。
 
相続税の申告と納税は10ヶ月以内と、決して余裕が十分にあるとは言い切れません。相続税について気になるときは、亡くなった方の住所地を管轄する税務署へ相談してみてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士