新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行して8日で1年となった。福島民報社は県内59市町村にコロナ禍の影響などを聞くアンケートを実施した。「影響が大きく残っている」「影響が残っている」分野があるとしたのは全体の72・9%に当たる43市町村に上った。特に観光分野で入り込み数が回復しない、医療・福祉・介護分野で人材不足や感染予防対策の継続による負担などを訴える自治体が目立った。行動制限などはなくなったが、経済などへの悪影響が続く現状が浮き彫りとなった。(18・19面に関連記事)


 アンケートは4月中旬から5月上旬にかけて実施し、全市町村から回答を得た。コロナ禍の影響についての回答は【グラフ(1)】の通り。「影響が残っている分野がある」が最多の38市町村(64・4%)。「影響が大きく残っている分野がある」としたのは福島市、いわき市など5市町(8・5%)となった。

 影響が続いているとした市町村に対し特に影響が残る分野を聞いた結果(複数回答)は【グラフ(2)】の通り。

 観光分野を挙げたのは25市町村(42・4%)で、入り込みや宿泊客数がコロナ禍前の水準に回復していない。郡山市や喜多方市、北塩原村、金山町などは観光客数について「コロナ前の8割程度」とした。下郷町は観光客数は回復したが、宿泊者数は「コロナ前の5割」と答えた。今春になっても影響が続く例もある。三春町は今期の滝桜の観桜者数がコロナ禍前の3カ年の平均約17万人に対し、8割の約14万人(集計中)にとどまった。各自治体は団体旅行から少人数の観光に切り替えが進んだ点や旅行の楽しみ方の多様化が背景にあると分析している。

 医療・福祉・介護分野の影響は17市町(28・8%)が挙げており、感染防止対策の負担や深刻な人材不足が残っているとの回答が目立った。広野町は町内の特別養護老人ホームで東京電力福島第1原発事故発生後から続く介護職員の不足にコロナ禍による離職が追い打ちをかけたと説明。全国的にも職員確保の競争は激しくなっているとみられ、解消のめどは立っていないという。

 商工業の苦境などを訴えたのは16市町村(27・1%)。地域の会合や団体旅行などの減少の影響が続くとされる飲食店の苦境を訴える事例が多かった。大熊町は原発事故発生後に町内で初めて夜間を含めた営業を再開した飲食店がコロナ禍後も閉店が続いているとした。

 伝統行事の中断が続くなど地域づくりへの危機感を示したのは10市町村(16・9%)だった。南会津町では感染拡大中に開催を見合わせた伊南地域の運動会を再開する見通しが立っていない。世代間の交流など重要な役割を果たしていたが、町関係者は「過疎化や少子高齢化が深刻化し、一度中断してしまった行事を再開させる動きは出にくいのではないか」と話した。

 市町村はコロナ禍からの回復に向けて国や県に販路回復や人材確保の対策の実施などを強く求めている。


【コロナ禍の影響がどれほど残っているか】

◆影響が大きく残っている分野がある(5市町)福島、いわき、国見、磐梯、三島

◆影響が残っている分野がある(38市 町村)会津若松、郡山、白河、須賀川、喜多方、二本松、田村、南相馬、伊達、本宮、桑折、川俣、大玉、鏡石、天栄、下郷、檜枝岐、只見、南会津、北塩原、西会津、猪苗代、会津坂下、柳津、金山、西郷、矢吹、棚倉、矢祭、鮫川、石川、玉川、平田、三春、小野、広野、大熊、飯舘

◆大きな影響が残っている分野は特に ない(14市町村)相馬、湯川、昭和、会津美里、泉崎、中島、塙、浅川、古殿、楢葉、富岡、川内、葛尾、新地

◆その他(2町)双葉、浪江