腎不全を患いながら、夢だった熱帯魚店をオープンし、北陸新幹線延伸後初のお旅まつりを心待ちにしている男性が小松市内にいる。小松駅前のアクアショップ「ディープブルー」(土居原町)の代表前田眞吾さん(57)。10〜12日のまつりは例年以上の人出が見込まれるだけに、生死の境をさまよった末に構えた「城」にも足を運んでくれる人が増えると期待する。「熱帯魚の魅力を伝え、地元のにぎわいに貢献したい」と意気込んでいる。

 幼いころから熱帯魚が好きで、お年玉や小遣いをためて水槽の仲間を増やしていたという前田さん。水の中を悠々と泳ぐ姿に「いつか自分の店を持ちたい」と夢を描いていた。

 そんな前田さんに腎不全が見つかったのは27歳の時。人工透析を受ける生活が始まった。3年後には母親から腎臓の移植を受けたが、52歳で治療を再開せざるを得なかった。

 県内のアクアショップ勤務などを経て故郷で独立開業したのは2021年。「3回ほど死にかけた」と病状は一進一退を繰り返していたが、最後は好きなことを貫きたいと、小松駅から300メートルほどにある一角に店をオープンした。初心者でも飼育しやすいカクレクマノミや淡水フグ、ベタなど約300種類の熱帯魚を扱っている。

 北陸新幹線小松駅開業後は、店舗がある通りを歩く人が増え、外国人も訪れるようになったという。お旅まつりでは11、12日に店の前で「メダカすくい」を開く予定だ。

 前田さんは「色んな楽しみ方がある熱帯魚の魅力を一人でも多くの人に伝えたい。生涯忘れられないペットと出合うことができる店を作っていく」と話した。