チュ・サンウクは、ドラマの中で特に意志の強い男をよく演じてきた。たとえば、『不滅の恋人』では王位を奪うという野望に燃えた首陽大君(スヤンテグン)の役に扮して、ギラギラするような気の強さを明確に見せていた。

そんな表現スタイルを持ったチュ・サンウクが『太宗イ・バンウォン〜龍の国〜』の主役を演じるというのは、本当に頼もしいことであった。
実際、チュ・サンウクは鉄のような意志を前面に出して李芳遠(イ・バンウォン)をたくましく演じている。そんな彼の活躍によって、『太宗イ・バンウォン〜龍の国〜』は重厚な歴史劇になった。
史実で見ると、李芳遠は1392年に朝鮮王朝を建国した李成桂(イ・ソンゲ)の五男だ。生まれたのは1367年で、まだ父親が無名だった。そして、李芳遠は父親が大将軍になっていく過程をつぶさに見ており、自分が成長した後には高麗王朝を自ら滅亡させる上で大変重要な役割を果たした。
本来なら李成桂が朝鮮王朝の建国後に世子を李芳遠にするということも十分に考えられた。それだけの器を持った息子なのである。しかし、『太宗イ・バンウォン〜龍の国〜』が描くように、やがて李成桂と李芳遠の間には親子の確執が生じてしまった。

李芳遠が王の座を目指す流れ

李成桂は息子の能力の高さを評価していたが、逆に、性格が強引なところを危惧していた。結果的に、李芳遠の継母である神徳(シンドク)王后が産んだ李芳碩(イ・バンソク)が世子になった。
もちろん、李芳遠は失望した。それでも、彼は大きな野望を持っていたとはいえ自制心も強かった。しかし、1396年に神徳王后が亡くなった後は事情が変わってきた。彼は政治的な野心を抑えられなくなってきたのだ。
こうして李芳遠が国王の座を目指す流れができていった。『太宗イ・バンウォン〜龍の国〜』でも、李芳遠の権力に向かう動きが大胆に描かれていくことだろう。そのとき、李芳遠を演じるチュ・サンウクの演技力はどう縦横無尽になっていくのか。彼の表現力に大いに期待したい。
文=大地 康