前年度につづき今年度も継続となった「都庁舎のプロジェクションマッピング」について、東京の夜間観光のキラーコンテンツとして期待が寄せられる一方、10億円近い費用や都庁を会場としたことに、一部で疑問の声が上がっています。

午後7時すぎ…庁舎前の広場では、プロジェクションマッピングを楽しむ親子連れや外国人観光客などの姿がありました。

(小池知事)「プロジェクションマッピングというのは日本の優れた技術。多くの観客を国内外から引き付ける魅力があります」

今年2月から始まったこの取り組みは、高さ約240メートルの都庁第一本庁舎の壁面に、国内外のクリエイターが作った複数の映像作品を投影するものです。建物に映す最大の常設展示として、ギネス世界記録にも認定されたことから、都は東京の夜間観光を振興するための「キラーコンテンツ」にしたいとしています。

このプロジェクションマッピングを新たなサービスの一貫として、取り入れたホテルも出てきました。

(京王プラザホテル 企画広報支配人 杉浦陽子さん)「こちらのお部屋から、プロジェクションマッピングの迫力ある映像をお楽しみいただけます」

通常の宿泊と同じ料金で、都庁側に面した部屋に利用者が泊まれるプランです。

(京王プラザホテル 企画広報支配人 杉浦陽子さん)「私どものホテルからですと、間近に迫力ある映像をお楽しみいただけるということで、是非お客様に楽しんで頂きたいという思いでプランを作りました」

ホテルの担当者は新たなプランによる客足の増加を期待し、今後の継続について検討していくということです。

観光振興に期待が寄せられる一方、3月12日に行われた今年度の都の予算委員会では…

(自民党 川松真一朗都議)「世の中は全体的に批判の声で溢れています。都庁舎でプロジェクションマッピングを行う意義、目的について伺います」

新年度に計上されている約9億5千万円の費用などに、一部の議員から批判の声が上がりました。都の担当者は意見に対し、今後の運営に反映していくとしながらも、事業を始めた、今年2月末から3月末までの経済効果の試算がおよそ18億円、見学者もおよそ6万人を記録するなど、実績として効果が上がっていると話しています。

観光業に詳しい専門家は、費用面には理解を示した上で、都庁舎を会場とすることで、経済効果が限定的になるのではと指摘しています。

(国際カジノ研究所 所長 木曽崇さん)「(会場が)都庁舎っていうのが若干問題で。東京都庁の壁をプロジェクションマッピングとして使ったとして、そこを観覧できる範囲っていうのはとても狭いんですね。都庁舎の前って言うのは西新宿の高層ビル街のど真ん中ですから。きちっと経済効果が生まれるような作り方ですね、もしくは場所の設定とかっていうのをしなければいけなかったのかなというふうに思っています」

観光業の専門家である木曽さんは、都庁という会場選びについて指摘していましたが、その理由について、プロジェクションマッピングは「観光価値がないところに観光価値を生むための手段」であるからだとしています。

そのため、すでに観光スポットとして人気のある都庁ではなく、例えば、高速道路の高架下に季節ごとの景色などを上映して、新たな人の流れを作り出すなど、現状では、観光需要のないエリアで、プロジェクションマッピングを行った方がより多くの経済効果があるのではと分析しています。

東京都は夜間観光振興のため、今後もプロジェクションマッピングの普及につとめたいとしています。