カタールで開催中のAFC・U-23アジアカップでパリ五輪出場を決めたU-23日本代表が4大会ぶり2度目の優勝をかけて、今日4日(0時30分)、U-23ウズベキスタン代表との決勝戦に臨む。今大会の最終的な順位がパリ五輪本番の組み合わせに反映される。優勝と準優勝とでは、メダルの行方を占う条件が天と地ほど違ってくる。絶対に負けられない決勝戦だ。

 2位で終わればパリ五輪本番でスペインと同組に

 8大会連続12度目の五輪出場権を手にするための日本の戦いは、U-23イラク代表に2−0で快勝した4月29日の準決勝をもって終わった。しかし、パリ五輪でのメダル獲りへ向けた次なる戦いが息つく間もなく日本時間の4日未明に訪れる。4大会ぶり2度目の優勝をかけたウズベキスタンとの決勝は、パリ五輪本番の組み合わせがかかった極めて重要な一戦となるからだ。
キャプテンのMF藤田譲瑠チマ(22、シントトロイデン)も、イラクに勝利した直後のフラッシュインタビューでこんな言葉を残している。
「パリ五輪の出場権獲得は自分たちにとって最低限の目標だったので、まずはそれを達成できて嬉しく思っていますけど、自分たちが狙っているのはアジアの頂点なので」
パリ五輪の男女サッカー競技の組み合わせ抽選会はすでに3月20日にパリ市内で行われている。男子では最大4カ国が出場するアジア大陸代表が決まっていなかったため、アジア1位から3位、および大陸間プレーオフ勝者として抽選が行われた。
結果は次のようになっている。
【グループA】フランス、アメリカ、ニュージーランド、大陸間プレーオフ勝者
【グループB】アルゼンチン、モロッコ、ウクライナ、アジア3位
【グループC】スペイン、エジプト、ドミニカ共和国、アジア2位
【グループD】パラグアイ、マリ、イスラエル、アジア1位
当初は2021年の前回東京五輪の成績が反映される形で、アジア1位から3位までが決まる予定だった。その場合は東京五輪でアジア最上位の4位に入賞した日本がグループDに入るはずだったが、今大会で相次いだ波乱がレギュレーションも変えた。
ベスト4が出そろった時点で、東京五輪までの5大会に出場した国は、日本を除けば2004年のアテネ五輪で4位に入ったイラクだけだった。ウズベキスタンは出場経験がなく、インドネシアは1956年のメルボルン五輪が最後。9大会連続で五輪出場中だった韓国は、準々決勝でPK戦の末にインドネシアに屈して姿を消していた。
アジアの勢力図が一変した事態を受けて、国際サッカー連盟(FIFA)は今回のAFC・U-23アジアカップの結果を反映させる方式に急きょ変更。日本は優勝すれば当初の予定通りグループDに、ウズベキスタンに敗れればグループCに入る形となった。
ここで見逃せないのが、準優勝でグループCに入った場合となる。

 パリ五輪本番では大会初日の7月24日に、グループリーグ初戦が一斉に開催される。グループCに入った優勝候補のスペインは、パリのパルク・デ・プランスでアジア2位、つまり今大会の準優勝国と対戦する日程もすでに決まっている。
FIFAが定める国際Aマッチデーの期間外に開催される五輪では、所属選手を代表チームへ派遣する義務が各クラブに生じない。特にヨーロッパ勢は五輪に対して関心が低く、今年3月にはフランスのスポーツ紙『L’EQUIPE』が、フランスサッカー連盟(FFF)に対するレアル・マドリードの動きをスクープの形で報じている。
「レアル・マドリードはFFFに対して『オーバーエイジ枠を含めて、所属するフランス人選手をパリ五輪には派遣しない』と通達した」
そのなかでスペインは例外で、同国のスポーツ法のもと、国際大会に臨む同国ナショナルチームへの選手派遣が義務づけられている。サッカーのリーガ・エスパニョーラもスポーツ法に準じる方針を、違反した場合の懲罰規定とともに定めている。
前回の東京五輪でも、直前に開催されたユーロ2020に出場したA代表選手6人を含めたほぼベストのチームを編成。決勝でブラジルに敗れ、自国開催の1992年のバルセロナ五輪以来の金メダルこそ逃したものの、準決勝では延長戦の末に日本を破っている。
日本がグループDに入った場合、24日の初戦はパラグアイとなる。今年1月に開催されたパリ五輪南米予選では、決勝ラウンド初戦で五輪3連覇を目指すブラジルを撃破。そのまま1位でパリ行きを決め、ブラジルは3位で予選敗退を喫している。
パラグアイが難敵なのは間違いないし、27日の第2戦で対戦するアフリカ代表のマリには3月の国際親善試合で、個々の身体能力に加えて組織力でも後塵を拝した末に1−3で完敗した。それでも、すべて中2日で行われる短期決戦で極めて重要なウエートを占める初戦で、強力な陣容で臨んでくるはずのスペインとの対戦はやはり避けたい。
対戦相手以上に問題なのがキックオフ時刻の違いだ。
フランスでは毎年のように夏に熱波が到来していて、同国の気象庁は4月からの3カ月予報で、例年よりも気温が高くなるとすでに発表。7月以降も酷暑が続くと見られているなかで、グループCに入った場合のキックオフ時間は、すべて現地時間でスペイン戦が15時、エジプト戦が17時、ドミニカ共和国戦が再び15時となっている。
初戦と最終戦は酷暑下でのプレーが不可避と見られる一方で、これがグループDだとパラグアイ戦が19時、マリ戦とイスラエル戦がともに21時と酷暑がやわらぐ時間帯となる。試合会場も、グループCはパリから約340km離れたナントへ移動して第2戦に臨むのに対して、グループDだと初戦と第2戦をともにボルドーで戦える。

 気象的および地理的な面からも、決勝でウズベキスタンを破り、アジア王者としてパリ五輪本番のグループDに入る形が、メダル獲りを目指す上で理想的と言っていい。
今大会のウズベキスタンは決勝までの5試合を全勝、総得点14に対して無失点と攻守両面で圧倒的な力を示し準々決勝でサウジアラビアを、準決勝では今大会の台風の目となっていたインドネシアをともに2−0で撃破。同国史上で初めてとなる五輪出場を決め、次は3大会ぶり2度目の優勝へ虎視眈々と狙いを定めている。
ただ、決勝前にRCランス(フランス)に所属するDFアブドゥコディル・クサノフら、主力3人が離脱したとウズベキスタンのメディアが報じた。代表チーム帯同は五輪出場権獲得までと、各所属クラブと取り決めがかわされていたという。戦力ダウンは免れそうもないが、それでも手強い相手である状況に変わりはない。
パリ五輪のメダル獲りを目指し、大岩剛監督(51)のもとで2022年3月に船出したチームは、同年6月に前回のAFC・U-23アジアカップに参戦。準々決勝で韓国に3−0で快勝したものの、続く準決勝で開催国ウズベキスタンに0−2で敗れた。
もっとも、各国が規定通り23歳以下の陣容で臨んでいたのに対して、日本とウズベキスタンはパリ五輪をにらんだ21歳以下の選手でチームを構成していた。当時のチームから、日本は藤田をはじめとする12人が今大会に臨んでいる。
韓国メディアの『Sports Seoul』は準々決勝でインドネシアに敗れ、パリ五輪出場を逃した自国のU-23代表と日本の差を、長期的な計画の有無に帰結させている。
「日本は長い間、パリ五輪へ準備を進めてきた。前回のU-23アジアカップを含めて、2001年1月1月以降に生まれた、パリ五輪の出場資格を有する選手で常にチームを構成してきた。チーム発足時から指揮を執り、この世代の選手の特徴を完璧に把握している大岩剛監督のもと、当然ながら組織の完成度も戦術の浸透度も高い。日本は今大会のグループリーグ最終戦で韓国に敗れながら、パリ五輪出場という目標を達成した。対照的に韓国のファン・ソンホン監督は、チームの指揮を執って1年も経っていなかった」
悔しさをバネにパリ五輪世代が歩んできた約2年間の日々が試され、かつ五輪本番の戦いも左右する大一番は日本時間4日0時30分に、日本が準決勝までの全5試合を戦ってきたジャシム・ビン・ハマド・スタジアムでキックオフを迎える。