今の自分に満足している人は、この先は読まないでください。
夢を叶えたい、何者かになりたいと切実に思っている人だけ、読んでください!

実業家・住谷杏奈さんの生き方から学ぶ、不確かな時代をサバイブするためのヒントを紹介する連載。
>>>前回の記事:自分にしかできないことって何ですか?│住谷杏奈
これまでのお話の中で、幾度となく出てきている言葉があります。それが「自責の念」。生まれ変わるためにとっても大切なキーワードなのです。


リセットボタンを押す前に“自責の念“を持つ

 この連載の大きなテーマである「リセット」。人生は何度でも経験できる、人は生まれ変わることができる、ということをお伝えしてきました。うまくいかないことがあったって、失敗したって、リセットボタンを押せば過去を断ち切りイチからはじめられるのですが、ここで大切なのが「自責の念」です。「自責の念」とは、自分自身の過ちや失敗を責めるという意味です。それまでのことを恥じて悔いること、深い反省をするということです。ただリセットボタンを押しただけでは、同じ失敗の繰り返しになるだけ。悩んでいる時間に即行動というお話もしましたが、スピーディに切り替えつつも、そこには反省がともなわないといけません。
 反省をするとき、上司の指示が悪かったから、同僚が協力してくれなかったから、あの人がああ言ったから……と、まわりのせいにばかりしていませんか? それではいつまでたってもあなたは成長しないし、生まれ変わることができません。


 今から16年ほど前、私がオフィシャルブログを始めたとき、ブログ側のスタッフさんは誰も私に期待なんてしていませんでした。開設した初日はアクセス数がまったくなく、どうやったらアクセス数を増やせるんですか?と相談しにいっても、友達に読んでもらうしかないんじゃないですか?と、そっけなく言われたこともありました(笑)。
 初めて自分の意思で始めたことだったので、正解はわかりませんでしたが、一人でも多くの人に注目してもらえるように、毎日試行錯誤しながら書いていました。するとすぐにブログをニュースに取り上げてもらい、あれよあれよという間に1日に何十万件というアクセスが来るようになったのです。
 すると、最初そっけなかったスタッフさんが別人のように優しくなり、毎日のようにお仕事依頼の連絡をくれるようになりました。
 でも、そのとき「あんなに冷たかったのに、アクセス数が増えたらコロッと態度が変わってイヤだな」とは不思議と思わなかったんです。ではどう思ったかというと、「自分の力が足りなかったから、私の話に耳を傾けてもらえなかったんだ」と、自分の力不足を反省しました。そして、ビジネスとは、自分だけでなく一緒に仕事をする相手にもメリットがあるようなことをしなければいけないんだと、大事なことを学んだのです。

 誰かに何か嫌なことをされたときも同じように考えるようにしていました。「あの人、性格悪いな」で済まさない。その人の性格が悪いのではない、私がちゃんとした扱いを受けるに値しない人間だからなんだと反省していました。もっと手の届かないところまで突き抜けて、一目置かれる人間にならないと!と、そのたびに自分を奮い立たせることができました。


悪いのは誰ですか?

 自分に自信がないと負の感情ばかり出てくるし、その負の感情が他人にいきがちなんですよね。他人のことは批判できるのに、自分のこととなると甘くなってしまう。だって、あの人が……って。
「会社の給料が安いから貯金ができない」「本当はやりたい仕事じゃなかった」「自分が成長できないのは会社のせいだ」……と思っている人がいるかもしれませんが、その会社を選んだのはあなたです。会社や周りのせいにする前に、自分の選択が間違っていたことを恥じるべきです。

 恋愛でもそうです。うまくいかないのは相手のせいだけじゃない。自分の言動はどうだったのかを省みないと、次の恋愛もうまくいかないんじゃないかな。例えば、嘘つきな彼氏、モラハラな彼氏、暴力をふるう彼氏、浮気しちゃう彼氏……それは、もちろんその彼氏が悪いのだけど、その彼氏を選んだのはあなた自身なんですよね。友人同士で、彼氏や旦那の愚痴や文句を言っている人たちがいますけど、それって自分は見る目がないですよーーー!!!と大声で言っているのと同じ。愚痴や文句を言う前に、自分自身の見る目のなさを反省すべきだし、自分の言動で悪いところがなかったか気づけなければダメです。その失敗、ダメだったことに気づくことが次へ進むためには大切なことなのです。



損失額は授業料。失敗は武器になる

 私の事業はすべてがうまくいっているわけではありません。以前もお話ししましたが、11年前に発売したフルーツ味の青汁は、残念ながらまったく売れませんでした。まずい!もう一杯!のような苦い青汁しか市場になかったので、我ながら斬新!!!と自信があったのですが、うまくいきませんでした(涙)。その数年後にフルーツ味の青汁がいろいろな会社から発売され、ブームになりました。このときに、私がやっているビジネスは早すぎても遅すぎてもダメ、時代を読む力とタイミングが重要なんだということを学んだのです。

 ほかにも、2014年にそれまで稼いだお金を全額投入して代官山にママカフェを作りましたが、3年半で閉店させてしまったことがありました。
 オープン当初、メディアにもたくさん取り上げていただき、連日行列ができるほどお客様に来ていただきましたが、お客様が来れば来るほど赤字になるという、ある意味で奇跡的なお店でした(笑)。
 当時、私の子どもたちもまだ小さかったので、食べ物が美味しいお店は子連れだとなかなか入りづらく、小さい子どもを連れていても気軽に入れるおしゃれで美味しいカフェが都心にあまりなかったので、これは私がママたちの憩いの場を作らなくては!という勝手な使命感から、このママカフェを作りました。キッズスペースやおむつ替えスペースを充実させ、子どもを遊ばせながら美味しいご飯を食べていただき、束の間ですがママたちにリラックスしてもらいたいなという強い思いがあり、私にとって一世一代の挑戦でした。

 そのお店を閉じたとき、私がまず反省した点は、経営というよりも、ママにとって夢のようなお店があったらいいな!を優先してシステムを作ってしまったということでした。飲食店を経営したことのない知識不足の素人が実店舗ビジネスを自由にやるとこうなってしまうよな……と反省しました。
 金箔で店名を入れたオリジナルグラスひとつに数千円かけたり、美味しいトリュフをフランスから取り寄せふんだんにピザの上に振りかけたり、本当は客席を多く取らなくてはいけないところ、客席と同じ広さの大きなキッズスペースを作ったので採算が合わなくなってしまったり……大きな声では言えませんが、今まで貯めていた現金1億円が初期費用と毎月の赤字補填で消えていきました。

 でも、不思議と後悔はしていないんです。ママカフェをやらなければ素敵なマンションの1室くらいは買えたかもしれない。でも、私にとってはマンションより大切な1億円以上の経験をさせてもらったからです。
 代官山で物件を探しまわり、やっといい物件に出会い契約し、内装もスケルトンからすべて自分好みに作り上げ、キッズスペースをとことん充実させ、食器や家具にもこだわり、オリジナルグッズを作り、システムもメニューも私がやりたいように考えて……借金ゼロでお店づくりを経験できたのは、人生の中でとても貴重な経験でした。もし、このとき「もっとスタッフがうまくやってくれたらよかったのに!」とか「なんでこのシステムじゃ難しいよって誰も教えてくれなかったの!」と私が思ったとしたら、それは大間違いです。周りを責めるのはお門違いなのです。すべては私ひとりの責任ですし、1億円はこの大きな経験をするための授業料だったと思っています。というか、そう思わないとただの時間とお金の無駄になってしまう。そうならないためにも、この失敗をリピートしないように、失敗から学んだことを生かしたビジネスで再起しようと思ったのです。

 失敗を恐れていては何もできませんし、失敗をただの失敗で終わらせては、その経験はなんの意味も持ちません。大事なのは自分で経験し、どうしてうまくいかなかったのかを考えること。そのときに他責にはせず、「自分の何がいけなかったのか」を反省することです。


気がつけなかった過去の自分に後悔している

 自責の念とは少し異なりますが、中学生の頃、いつも転校生で生意気な私のことを目にかけてくれていた学校の先生から放課後に呼び出され、「杏奈は人が話している途中でも、自分の思っていることや聞きたいことがあったら我慢できず、すぐ口に出してしまうところがある。話の腰を折ってしまう。それはよくないことだから、人が話しているときに何か言いたくなっても、一回深呼吸して、話が終わったら質問をするようにしなさい。それは、すぐに直した方がいい」と言われたことがありました。当時はその意味すらわからず、聞く耳も持たず、反抗してしまいました。でも、なぜかその先生の言葉がずっと心に引っかかっていました。
 それから数年後、社会人になり様々な人とコミュニケーションを取る機会が増えたとき、「あ、あのとき先生が言っていたことって、こういうことだったのか」と、自分の中にスーッと入っていくのがわかった瞬間がありました。気持ちよく腑に落とすことができたのです。時間は経ってしまいましたが、やっと「過去の自分を恥じる」ことができたのです。あー、この気持ちを先生に伝えたい!と、数年ぶりに通っていた学校に先生の連絡先を聞き、電話をかけました。あのときに大事なことを教えてくれた先生は、ご病気で他界していました。もっと早くに気づいてお礼を言いたかった。
 大人になるにつれ、自分の間違った部分を正してくれる人は少なくなっていきます。あのとき、先生が教えてくれたときに、すぐに理解して正した姿を見せたかったと後悔しました。いつか気付くことは大半の人ができること。いかに早く助言を受け入れ反省できるかも大事なことなんだなと、そのときに学ばせてもらいました。

「プチ転生」をするには、ダメだった過去を断ち切らなければいけません。ただ断ち切るのではなく、まずは過去の自分を恥じること。ちゃんと、しっかり恥じること。どうしてそんな行動を取っていたのか、過去の自分と向き合って、とことん恥じること。その恥じた自分から学んだことを武器として装備し、また今日もリセットボタンを押して新しい自分に生まれ変わるのです。



PROFILE
住谷杏奈(すみたに・あんな)
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1983年2月1日生まれ。2006年にお笑いタレント・レイザーラモンHGさんと結婚し、2008年に男児、2011年に女児を出産。夫のケガを機に商品開発をはじめ、実業家としての才能も開花。美容の知識を活かしたプロデュース商品で次々とヒットを生み出す。現在は、実業家、タレントとして活動。