先祖帰りしてRRで登場した最新のEVワーゲン、ID.4に乗った渡辺慎太郎さん、渡辺敏史さんの本音やいかに? 今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗!
「手応えはとてもスッキリ」渡辺慎太郎
ID.4はBEV専用のプラットフォームを使ったVWのピュアEVではあるけれど、同時にVWとしては極めて稀な後輪駆動モデルでもある。
「VWだけにビートルと同じRRの駆動レイアウトか」とすっかり思い込んでいたものの、よくよく調べてみたら駆動用モーターはリア・アクスルよりも前方にあって「これはRRというよりもミドシップではあるまいか」と気が付いたのはお恥ずかしながらごく最近のことである。
前輪に駆動力がかかっていない分、ステアリングの手応えはとてもスッキリしていて、この点は他のVWと大きく異なるID.4ならではの特徴と言える。
また、バッテリーとモーターをホイールベース内に収めることにより生まれた前後重量の配分のよさも、ID.4の旋回性能にプラスの効果をもたらしている。
航続可能距離は最新モデルで延長が図られたそうで、ライトは435km、プロは618kmにそれぞれ伸びている。
バッテリーとモーターのハードウェアに変更はなくソフトウェアの変更で実現したらしい。クルマの世界では今後ますます、ソフトウェアの重要性と依存度が高まっていくのだろう。
「過日の絶品を思い出す」渡辺敏史
VWのBEV戦略の柱となるIDシリーズ。その内で要となる世界戦略車がID.4だ。
ランニング・チェンジは細かく行われており、直近では航続距離の延長に加えて搭載バッテリー容量を少なくして価格を抑えたライトもいよいよ上陸を果たした。
航続距離はプロの618kmに対して435km。使い方に応じて選んでくださいというわけだが、行動半径は小さくなるも日常的なニーズはライトでカバーできると思う。
デザイン的な差異以上に既存車との違いを感じるのはパッケージングだ。
BEV専用プラットフォームを用いるだけあって、前席の足元まわりや後席の居住性は実寸の割に広々としている。
始動の儀式もなくドライブ・セレクターの操作が起動コマンドになるなど、インターフェースの合理性も先進的だ。
回生減速度調整のためのパドルが欲しくはなるが、加速や制動のシームレス感はさすが手練れの自動車屋のそれ。
低重心+後輪駆動を活かしたライド・フィールのすっきりぶりやまろやかさに、個人的には過日の絶品、ゴルフVIのコンフォートラインを思い出してしまった。
写真=小林俊樹(メイン)/郡 大二郎(サブ)
(ENGINE2024年4月号)