製造業向けに自動搬送システムを提供する中国企業「縦葦科技(Zongwei Technology)」がこのほど、立て続けに2回の戦略出資を受け、総額2億元(約40億円)近くを調達した。出資に参加したのは中国EV最大手の比亜迪(BYD)のほか、永鑫方舟資本(Yongxin Capital)など。

縦葦科技は2020年、モーションコントロール技術を軸にスマート製造に関わるコア技術を手がける研究開発型企業として設立された。同社の磁気浮上式の搬送システムはオートメーション業界に衝撃を与えた革新的な製品で、自動生産ラインのフレキシブル化やスマート化を大きく後押ししている。主力の自動磁気浮上輸送システム「sTrak」シリーズにはサークル型、ストレート型、重量物用、混合型などさまざまなタイプが揃う。

sTrakシリーズ

磁気浮上式搬送システムは産業の基礎を担う新たな技術として、さまざまな業界で広く活用されている。縦葦科技の製品も、すでに新エネルギー車(NEV)用バッテリーや自動車部品、電子機器・家電類、医療分野の製品などを手がける大手企業に導入されている。

縦葦科技は磁気浮上式搬送システムに関わるあらゆる技術を独自開発する実力があり、リアルタイムシステムやアルゴリズム、サーボドライブ、専用モーターなどを自社開発してきた。特にモーションコントロールでは、自動衝突回避アルゴリズムが引き起こす運動効率の低下という問題を首尾よく解決し、業界初の最適制御アルゴリズムを開発した。

近代以降の産業では、生産現場と物流分野における搬送システムが工場を支えている。しかし、近年まで主流だったベルトコンベヤーやチェーンコンベヤーは柔軟性や精度に欠け、スピードも遅かった。これらコンベヤーの欠点を解決し、フレキシブルな生産ラインの設計を可能にしたのが磁気浮上式の搬送システムだ。このシステムでは、製品を載せて移動する可動子(ムーバー)を自由に定義して、それぞれを独立して動かすことができる。軌道部分はモジュール化設計を採用し、それぞれの工場の要件に応じて自在に組み合わせて設置できる。

また、顧客自身が同社のソフトウエア「sTrak Studio」を使ってシステムの構成や動作をフレキシブルに調整できるため、生産ラインや工程を設計する際にベルトコンベヤーのような物理的制約を受けることもない。磁気浮上式搬送システムは部品構成がシンプルかつコンパクトで摩擦もないため、クリーンルームや無菌環境、真空環境などの加工現場に適しており、海外では食品や医薬品業界で多く導入されている。さらに、メンテナンスや部品交換なども簡単で、顧客は運営維持コストを大幅に低減することができる。

同社の試算では、世界の磁気浮上式搬送システム市場の規模は100億元(約2100億円)に迫る勢いで、中国市場も急成長中だという。同社の製品はその有用性が市場で認められ、ここ数年で売上高が急増した。今後3〜5年のうちに、製造業における磁気浮上式搬送システムの普及率が大幅に高まり、市場規模も拡大すると同社は見ている。

製品の活用シーン

縦葦科技のコアメンバーは上海交通大学や清華大学、北京大学、ハルビン工業大学など、名門校の出身者が中心で、確かな技術開発スキルと豊富な事業化経験を強みとしている。現在は江蘇省蘇州市の蘇州工業園区に拠点を構え、上海市や広東省などにも開発生産センターやサービスセンターを開設している。

*2024年4月8日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)