わかめに含まれる栄養素には、健康に役立つ作用がある反面、とり過ぎてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!

管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、わかめの食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。

不調改善やダイエットに!わかめを食べる「メリット」

煮物やサラダ、味噌汁、ラーメンの具として定番のわかめ。

三陸地方や鳴門地方を中心に、日本各地で養殖されている三大海藻(わかめ、昆布、海苔)の一つです。縄文時代の遺跡からも発見され、私たち日本人にとっては古くから食べられてきた身近な食材といえます。

そんなわかめは、部位によって「茎わかめ」や「めかぶ」としても食べられています。この記事では、それらを除いたものをわかめとして紹介します。

生のままのものを「生わかめ」、塩をまぶして生わかめに近い食感を維持した「塩蔵わかめ」、乾燥させて長期保存ができる「乾燥わかめ」など、これ以外にも地域特有の加工方法などがいくつもあるのが特徴。

生わかめに含まれている栄養素の中で、とくに多くとることができる主な栄養素は次の通り。

・ヨウ素
・ビタミンK
・マグネシウム
・カリウム

なかでも、とくにヨウ素が多く、1日の成人の推奨量(ほとんどの人が必要量を満たす量)を十分に満たすほど含んでいます。

ヨウ素の主な働きは、甲状腺ホルモンの主材料となり、基礎代謝の促進、たんぱく質合成の促進や脂質代謝にも関わっています。

そのほかの栄養素の働きには、

・骨を丈夫にする
・動脈硬化や心臓病を予防する
・血圧を下げる
・筋肉の働きを正常に保つ

などといった働きがあります。

このように上手にわかめをとり入れることで、生活習慣病を予防したり、美容に役立てることができるのです。

甲状腺機能や便の異常も?わかめを食べすぎる「デメリット」

多くのメリットが得られるわかめですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。

甲状腺の病気のリスクが高くなる

ヨウ素は、適量であれば代謝やたんぱく質の合成を促進するなど、体にメリットをもたらします。

ところが、とり過ぎてしまうと反対に甲状腺ホルモンの合成が妨げられるなどの影響があらわれ、甲状腺機能低下症や甲状腺腫といった病気につながることが指摘されています。甲状腺機能低下症になると甲状腺ホルモンの分泌が低下し、無気力、肌の乾燥、むくみ、体重増加、便秘などを引き起こします。

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、成人の1日の耐用上限量(摂り過ぎによる健康障害を未然に防ぐ量)は3,000μgと設定されています。これを生わかめだけで満たすためには、約190g分=小鉢3杯弱に相当します。

生わかめは旬である冬から春にかけて流通することが多く、そのタイミングで一度に多く食べたり、毎食取り入れたりすると簡単にオーバーしてしまう可能性があります。

なお、塩蔵わかめ(塩抜き/生)の場合は370g、乾燥わかめ(素干し/水戻し)の場合は160gで耐用上限量に達してしまいます。乾燥わかめは水に浸さない状態では12分の1くらいの重量となるため、乾燥状態では13g程度に相当します。

すでに甲状腺に異状がある人の場合、これより少量であってもリスクが高い可能性があるため、医師の指示に従ってください。

また、妊婦、授乳婦、14歳以下の子どもは、耐用上限量がより低く設定されているため、それ以外の人たちよりも食べる量や頻度を減らすようにしましょう。

下痢などの不快な症状を招く

ほかの栄養素と比べるとそこまで多く含まれていませんが、わかめには食物繊維もある程度含まれています。

食物繊維は腸内環境を整えるなどの働きによって便秘解消に役立ちますが、こちらもとり過ぎによっては逆効果を生むことに……。

食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と溶けにくい不溶性食物繊維の2種類があります。そのうち、わかめには水溶性食物繊維のほうが多く含まれています。

水溶性食物繊維は、体内で水に溶けてゲル状になり、便をやわらかくする働きも持っています。ところが、とり過ぎた場合には便の水分量が増えすぎ、下痢などの腹部症状を起こす原因になることがあるのです。

また、食物繊維は消化に負担をかけるため、疲れているときや多く食べた場合に胃もたれを起こすこともあるでしょう。

わかめを楽しむ量とタイミングは?

上記のとおり、わかめに含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。

そこでここからは、わかめを楽しむ量とタイミングについて解説していきます。

健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?

わかめの栄養素のなかで、とくに「過剰症(とり過ぎて健康に害が生じること)」の心配が高いのは前述のとおりヨウ素です。

ヨウ素は、昆布、ひじき、昆布だし(※)にも多く含まれています。そのため、そういった食品を食べることを想定した場合、わかめからとるヨウ素は耐用上限量の半分程度をみておくと安心なのではないでしょうか。

そうすると、生わかめだけであれば100g程度、塩蔵わかめ(塩抜き/生)のみで200g程度、乾燥わかめのみで80g程度(乾燥状態は6.5g程度)が1日の目安といえます。

この量であれば、ほかの海藻類を食べるとしても、それらをよほど大量に食べるのでなければ、健康への悪影響が心配されるヨウ素や食物繊維のとり過ぎになるリスクは少ないといえるでしょう。

なお、ほかの海藻や昆布だしをいっさい食べないとしても、うま味として海藻エキスを使用した食品(加工食品のたれ、スープなど)もあり、それらにもヨウ素が含まれます。個人によってこういった食品の利用頻度は異なりますが、耐用上限量を大きく超えて毎日とり続けた場合に「過剰症」のリスクが高くなるため、これくらいの量に収めておくことで安心して毎日取り入れやすくなるのではないでしょうか。

※……食品そのものだけでなく、それを使った煮物などの料理や味噌汁なども含む。

どのタイミングで食べるのがいい?

わかめは食物繊維が含まれていて消化に時間がかかるため、遅い時間帯の夕食に大量に食べるのは避けたほうがいいでしょう。消化活動が就寝中に活発になると睡眠の質を下げる可能性があります。

反対に、ぜひ食べてもらいたいタイミングは、食前30分〜1時間前。

このタイミングで食べると、わかめに含まれる水溶性食物繊維が水分を吸って胃で膨らんで食べ過ぎを抑えたり、糖や脂質を吸着して排出させやすくする働きが期待できるからです。

さらに、食事の最初に食物繊維をとることによって食後血糖値の上昇を抑え、食事からとった糖を脂肪として体に溜め込みにくくすることにも役立ちます。


安全な量を把握して食べれば、わかめはメリットが多い食品です。わかめのメリット・デメッリトを理解し、上手にとり入れてみてくださいね。

■執筆/監修・・・
管理栄養士・ゆかりさん管理栄養士、食生活アドバイザー。一女のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとしても活動。

構成/サンキュ!編集部