「養育費も取りやすくなりそうだし、子どものためには2人で育てる方がいい」「そもそも離婚した相手に会いたくないし、DVの場合はなおさら」(共に、SNSの声)

【映像】めんどくさい? 「旅行」「ワクチン」「再婚」…許可が必要なのは?

 離婚後も、父と母の両方が子どもの親権を持つ「共同親権」。

 日本では現在、離婚後の親権は 一方の親に限られた「単独親権」のみとなっている。そんな中、16日、離婚後の「共同親権」を認める民法などの改正案が衆議院を通過。

 改正案では、「単独親権」か「共同親権」かを父母が協議して選択。折り合わない場合やDV、子どもへの虐待のおそれがある場合は、家庭裁判所が判断し、どちらかの「単独親権」にするとしている。

 「共同親権」を巡っては、父母のいずれもが子どもの養育責任を負うことが明確になり、面会交流の機会や低い支払い率が問題となっている養育費が確保しやすくなることなどが期待されている。

 一方で、「実質的な離婚禁止制度だ」と批判する声も上がっており、オンライン署名サイトChange.orgでは、「共同親権」への反対署名が22万を超え、大きな関心を集めている。

 さらに懸念されているのが、「共同親権」を選んだ父母でも、どちらかが単独で親権を行使できる「急迫の事情」にあたる場合であり、「親権の範囲が曖昧」と指摘する声もある。

 明確な基準がないため、子どもの進学や転居、パスポート申請など様々な場面で事あるごとに離婚した元配偶者に連絡を取り、合意を得なければならない可能性もある。

■就学支援金がもらえなくなる? しわ寄せは子どもたちに…

 みなと綜合法律事務所の斉藤秀樹弁護士は共同親権導入の経緯について、「元々この法制審議会の議論は『養育費の未払い問題の解消』を最大の課題としてスタートした」と説明。

 一方で「今回の法改正で養育費についての問題が全て解決するとは到底思えない」と懸念を示した。
 
 「そもそも養育費の支払いという義務が履行されていないこと自体が問題だ。中には元パートナーと関わりたくないからと養育費の受け取りを拒絶するケースもあるが、社会保障の負担の問題もあるので、本来は義務者にはきっちりと負担してもらうべきだ」

 共同親権を選んだ場合、日常のことや急迫の事情がある場合以外は双方の親の同意が必要になるがそれはどういう時なのか?

 斉藤弁護士は「誤解している人が多いが、今後は離婚していない家庭においても『急迫の事情以外は連名で進めなればいけない』というルールが強くなる。これは非常に大きな影響を及ぼすだろう。次に様々なケースについてだが、私たちの弁護士グループが法制審議会に『このような場合はどうなるのか?』と質問状を出したが、全く回答がなくここまできてしまった。国会での議論すら難しい様子であり、本当に様々なものがみんな国民に放り投げられてしまっている」と説明した。

 さらに、旅行やワクチン接種など、個別の対応については「週末を利用した旅行なのか、学校行事としての修学旅行なのかによって違ってくるかもしれないが、海外留学となると“日常的な教育”とは離れているため、許可が必要になるかもしれない。個人的な意見だがワクチンについては、例えばインフルエンザのワクチンと子宮頸がんワクチンでは事情が異なるかもしれない」と述べた。

 では、共同親権を選んだ後、再婚し新たな相手と養子縁組する場合、双方の親の許可は必要なのだろうか?

 斉藤弁護士は「法律案によると、元パートナーからの承諾も必要になるようだ。それができない場合、家庭裁判所の許可を得ることになるが、そうなると家庭裁判所の負担が大きくなる」と説明した。

 共同親権になることで年収が2人の“合算”となり、例えば就学支援金をもらっていたシングルマザーが給付の対象外になるとの懸念もある。

 これに関しては「国会での答弁なども含めて考えると、共同親権になれば収入は合算になるようだ。そのため、導入後に就学支援金が受け取れなくなるなど、子どもたちにしわ寄せがいってしまう可能性がある」と説明した。

 夫婦間においてもリスクがある、と斉藤弁護士は懸念を示す。

 「そもそも、意思疎通がうまくできず、不仲になってしまったことで離婚している。そんな2人がようやく別々の生活になったにもかかわらず、様々なところで関わりをもつことで争いが再燃するのではないか」

 海外では取り入れている国も多い共同親権だが、そもそも日本人の気質に合っているのだろうか?

 斉藤弁護士は「家族法は、その国の文化・習俗・習慣に大きく影響されるものだ。例えば、統計によるとフランスやスウェーデンでは、家族全員で週に6日あるいは7日揃って食事をしているが日本では週に2回程度だ。このように“家族の姿”は国によって異なる。そのため、『海外がこうだから日本もこうなる』とはならないのではないか」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)