お金を使うことに極端な不安や恐怖を抱く症状“貧困妄想”。年収などに関係なく、誰でも陥ってしまう可能性があるという。相談しても、単なるケチや倹約家と思われ、理解を得られず孤立するケースも。『ABEMA Prime』では貧困妄想について、当事者と専門家と共に考えた。

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 貧困妄想に陥った、吉良大和さん(40代後半)。2021年に転職したものの、仕事がうまくいかず新しい職場にも馴染めないストレスがあった。2022年に不眠になり、うつ病と診断され休職。その後、貧困妄想の症状に苦しむようになった。

 休職後、常に家にいた吉良さんは「上の子が大学入試のタイミングだったが、不登校になった。お互い家にいて、常に上の子がやることが気になってしまい、昼間にクッキーを焼いていたりすると、“電気代が高いのに”とキレてしまう。そして昨年、妻と子どもが愛犬も連れて、私一人残して出ていってしまった」と振り返る。

 吉良さんは年収約900万円(現在は傷病手当金を受給)、貯金は約1500万円あるにもかかわらず、「とにかくお金を使うのが怖くて使えない」といった感覚を抱いているという。不安になると、定期的に預金残高をチェックしてお金が減っていないことを確認することで、心を落ち着かせている。

 精神科医YouTuberの松崎朝樹氏は、貧困妄想について「取り返しのつかないことになったと思う妄想の一つだ。お金がないと思う貧困妄想、大変な体の病気になったという心気妄想、自分は大変な罪を犯してしまったという罪業妄想、そういったものの一つで、うつ病に生じるもの」と説明する。

 倹約家との違いについては「誰もが生きていれば経験する落ち込みや気分の波、不安から、この病気と呼べるレベルのところまでの境目が明確になく、程度問題というのが一つある。仕事にいずれ戻れるのだろうかという人生の危機が迫っている。生活も、お金以外の面で実際に苦しいだろうし、その困り具合の差だ」と話す。

 また、吉良さんの対処法について「自分の人生にとって大切な価値は何だったのかをもう一度並べ直す。10円20円のお金なのか、それとも健康なのか、家族なのか、もっと生産的に儲けることなのか、を並べ、その上でメリットとデメリットをもう一度見直す」、「節約意識を受け流すスタンスをとる」と提案。

 具体的な方法として「実際に小さな浪費を行う。チロルチョコを買ってみる、もしくは100円のジュースを買うなど、自分が許せる範囲で。ただし、周りが無理やりやることじゃない。そんなことをやったら恐怖が強まるだけだ。自分で決意を固めて少しずつ浪費にチャレンジする」ことを勧めた。(『ABEMA Prime』より)